オピニオン
医薬品への関税
最近、会見でよく出る質問が、米トランプ政権の関税政策にどう対応するかとの問いだ。医薬品に関しては当初は、相互関税の対象から除外される方針だったが、米商務省はこのほど、関税導入にむけて医薬品や原薬の輸入が国家安全保障に及ぼす影響を調査するため、パブリックコメントを開始したことを発表。トランプ大統領も「近い時期」に医薬品の関税を課すとの意向を示している。
医薬品の関税に関してはそもそも、世界貿易機関のウルグアイ・ラウンド交渉時に、日本や米国、EUなどが、同一の医薬品関連産品の関税を撤廃することを確認。医薬品へのアクセスが妨げられないようにとの意図がある。
もし仮に医薬品が関税の対象になればどのような影響があるのだろうか。まず考えられるのは、薬価上昇により米国の患者への負担増につながり、アクセスに悪影響を及ぼすことだ。米国では、ジェネリック医薬品が処方薬の9割を占めているが、その大半を輸入に頼っている。また新薬に関しても複雑なグローバルサプライチェーンの上に成り立っているため、供給不安を引き起こす可能性もある。製造拠点を米国に生産拠点を移したとしても、原薬の輸入を中国に頼っている。
日本企業にもかなりの影響があるとみられる。特に国内製薬大手の売上高において、米国市場での売上は相当なものだ。関税政策はこのまま加速していくのか、今後の状況が注目される。
(2025年4月25日掲載)
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