オピニオン

かわいいぬい撮りの世界

 インスタグラムを始めた。大好きなサンリオキャラクターのぬいぐるみを中心に投稿する、いわゆる「ぬい撮り」というものに手を出してみたのだ。10cmほどのぬいぐるみにドレスを着せたり、ミニチュアのカトラリーを持たせたり、テレワークさせたり自転車に乗せたりピクニックさせたり、いくらでもシチュエーションが考えられて、そのどれもこれも悶絶するほど愛らしい。可愛いキャラにつられ、リアル知り合いにはとてもアカウントが公表できないほど自分の中のぶりっ子が炸裂している。フォロワーも少しずつ増えてきた。
 先日、感染対策を行ってサンリオの総本山ことピューロランドに赴いた。いつもは10cmほどのぬいぐるみだが、ここでは等身大サイズのキャラクターたちに会える。思わず色めき立って興奮状態で写真や映像を撮りインスタに上げまくった。夢心地の1日だった。後日、ふと自分の投稿を見返した。このキャラクターの可愛さを全世界の皆に共有できて本当に意義があるなあ、へへっ…などと悦に入っていると、映像の音声を消し忘れていることに気付いた。「え…」と声が漏れ、血の気が引く。震える指で音声ボタンを押す。「イヒッ…こんにちは…キャラ大…おめでとうございました…ウヘヘヘ……」まごうことなきオタク全開の自分の声が全世界に発信されていた。速やかに映像を削除した。
 あれから2週間。何もなかったかのように私は、まだインスタでぶりっ子を貫いている。



(2021年7月9日掲載)



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(2021年7月16日掲載)
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(2021年7月9日掲載)
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(2021年6月25日掲載)