オピニオン

出遅れを挽回できるか

 先日中国の新薬ビジネスに関するシンポジウムに出席し、中国政府が推し進める「一帯一路」戦略や医薬品ビジネス政策についての説明を受けた。中国は世界第2位の医薬品市場とはいえ新薬は全体の約2割で、自国製薬企業によるジェネリック医薬品が大きなウェイトを占める市場だが、近年の創薬技術の発展は目覚ましく、中国からの新薬技術の導出が相次いでいるという。「まさに『医薬大国』から『医薬強国』への転換期といえる」――。この発言は非常に興味深かった。
 さらに中国政府は、これまでにも増して外資系の製薬企業に市場開放を進めているという。昨年12月には、中国の国内・国外を問わず同時に承認申請した革新的な医薬品に対して、特許期間を最長5年間延長する特許制度を新設。知的財産権の基準緩和なども含めて、ビジネス環境の整備に努め、新たな投資を呼び込もうとしている。
 欧米の製薬企業はすでに1990年代から本格的に中国市場に進出し、根を張る。市場は今後も順調に成長していくことが予見され、ゆくゆくは米国を抜いて世界第1位の市場に躍り出る可能性も十分あるのだから、このアドバンテージは非常に大きい。
 一方でパネリストからは、日本の製薬企業の中国展開の出遅れを指摘する声が相次ぎ、「欧米市場ばかりに目を向け、中国市場を軽視していたのではないか」といった手厳しい意見もあった。実際に中国市場では、欧米の製薬企業と比べて日本の製薬企業の存在感はかなり薄いという。今後間違いなく「医薬強国」になるだろう中国での市場において、日本の製薬企業が今後どのような戦略を展開していくのか、注視していきたい。



(2019年3月15日掲載)



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