オピニオン
エールを送りたい
フィギュアスケートの浅田真央選手が引退を発表した。自身のブログで「競技生活に悔いはない」などとコメントを出すとネット上ではすぐに第一報が流れた。翌日の朝刊はスポーツ面だけでなく1面や社会面にいたるまで特集が組まれ、これまでの実績や関係者のインタビューが載った。数々の記憶に残る演技を残したその裏には、人並み外れた練習があったという。課題を一つ一つ克服することで自信をつけ、これらの結果につながったのだろう。
同じ日の朝刊、読者からの声に次のような投稿があった。投稿者は40代後半の契約社員の男性。同窓会に行くかどうかで悩んでいるという。10代で大病を患い高校を中退した。病気は完治せず、自活しているとはいい難い。歯を食いしばって懸命に生きてきたが、同級生と対等に話ができるだろうかと弱音を吐いている――というものだった。
華やかな場面を人に見せることはなくても、自分の人生に全力で向き合ってきたということはそれだけで尊い。困っている人が歯を食いしばらなければ生きていけないような状況は改善しなくてはいけないし、懸命に生きている人が自分に自信を持てないような社会でいいのだろうか。この男性の人生も浅田選手と同じような輝かしいものであるはずだ。精いっぱい生きている人が「人生に悔いなし」と思えるよう、エールを送りたい。
(2017年4月21日掲載)
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