オピニオン

「近所の病院の敷地内薬局」第4報

 「敷地内薬局」の問題が燻り続けている。日本薬剤師会によると、いわゆる敷地内薬局の誘致事例として、9月までに33都道府県・64件を把握しているとのことで、他の医療機関にも強い影響力をもつ東京大学医学部付属病院でも「誘致の可能性を否定できない動き」が見られるという。
 こうした現状に対して日本薬剤師会などから反発の声があがる一方、医療機関側にも言い分はある。国立大学付属病院長会議は、「我々としては、政府の規制改革推進会議が承認した方針に沿って取組んでいるだけであり、法律に違反しているわけではない。なぜ怒られるのかというのが正直なところだ」とコメント。国がゴーサインを出したからやっているまでで、批判されるいわれはない、というわけで、これも正論ではある。
 周知の通り2018年度調剤報酬改定では、敷地内薬局の評価の「適正化」が講じられており、特定の医療機関と不動産取引など「特別な関係」をもち、その医療機関からの処方せん集中率が「95%」を超える薬局に対しては「特別調剤基本料」が適用された。それでも、敷地内薬局開設の動きは止まらない。前記の国立大学病院長会議でも、敷地内薬局をすでに設置済みの病院が4病院、「検討中・準備中」も12病院あるとのこと。「患者不在」のいたちごっこと非難合戦は、医薬分業の本質から遠ざかるばかりである。
 さて、この欄で足掛け2年にわたり報告してきた「近所の病院の敷地内薬局」の続報。16年の夏頃、産婦人科と内科を標榜する50床規模程度の近所の病院の敷地内に薬局が開設したものの、17年の初頭に病院が「全科休診」を宣言、残された敷地内薬局だけが細々と営業を続けていたが、17年暮れ、休診していた病院が、診療科を内科のみに特化した形でめでたく診療を再開した、というのがこれまでのあらすじ。そして18年6月末、敷地内薬局はひっそりと閉店した。理由は不明。10月中旬現在、入り口のガラスを通して建物内に雑然と残されたコピー機や備品の類が丸見えのまま、薬局は放置されている状態だ。果たしてこれは終焉なのか、それとも経営主体を替えて再開するのか、いまのところ、告知らしきものは、ない。



(2018年10月19日掲載)



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(2018年10月19日掲載)
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