オピニオン
せまる外資による株式交換M&A
法務省は商法改正により、06年から外国企業による株式交換等を活用したM&Aの解禁方針を示している。99年改正で認められた国内企業同士の自社株と買収先企業株の交換によるM&Aに加え、海外企業による国内企業買収等も同様に認めるというもの。米、英企業間では以前からあったが、現金調達が必要であった外国企業による日本企業買収を、株式の交換という方法で可能とすることにより、対日投資を促す狙いもある。
この改正は、あのトヨタをして「防御する方法がない」と言わしめているそうであるから、そのインパクトのほども知れる。解禁後はウォルマートがダイエー買収に動くとの予測もある。今後、洗礼を受けるのは薬系業界も例外ではない。
三菱東京フィナンシャル・グループとUFJホールディングスの経営統合交渉は、外資からの株式交換による買収防御のためと見る向きもあり、その交渉過程は多少理不尽な面もある。今後、防衛のためならそうした“行儀の悪い”行動に出る企業も現出するか、といった違った意味での寒々しい思いもある。
今後、M&Aは進むだろう。が、それは入口の話。前述のように、外国企業同士ではすでに行われている株式交換等によるM&Aだが、M&A全体としていわゆる成功しているといえるのは米国企業同士で2割強、欧州企業同士の例では1割程度だともいわれる。慎重さがなくなるとはいわないが、障壁が低くなればそれだけ参入者も増えて分母も大きくなり、対国内企業買収の成功率はさらに下がる。統計的にも死屍累々ということもありえる。
(2005年2月18日掲載)
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◇花粉症治療で見る 患者負担の日本とアメリカの事情 (2005年2月25日掲載) |
◆せまる外資による株式交換M&A (2005年2月18日掲載) |
◇審査期間短縮への道のり (2005年2月11日掲載) |