オピニオン

二院制の意義

 石破茂首相は3月7日、「高額療養費制度」の自己負担上限額引き上げの実施を見送ると表明した。今年8月に予定していた負担上限額の引き上げを見送った上で、秋までに改めて方針を検討し、決定するとの意向を示した。石破首相は同日夜、総理大臣官邸で、高額療養費制度をめぐり、がんや難病の患者団体と面会した。見送りの決断は、患者団体の要望を聞いたあとだった。
 国会では新年度予算案が3月4日に衆議院を通過し、参議院で審議に入ったばかりのタイミングだった。予算案には、高額療養費の患者負担引き上げを8月から実施する内容を盛り込んでいる。患者負担引き上げの見送りにより、衆議院を通過したばかりの予算案が、もう一度衆議院に戻され、審議をやり直すこととなった。こうした経緯に「国会は大混乱」「衆院採決は何だったのか」との声が聞こえてくる。しかし、そうした指摘は二院制を否定するものでもある。衆議院を通過した案件を参議院で追認するだけでは、二院制を採用している意義が失われる。
 参議院のホームページを見ると、二院制の利点が書かれている。①国民の様々な意見を広く反映させることができる②一つの議院の決めたことを他の議院がさらに検討することによって審議を慎重に行える③一つの議院の行き過ぎを抑制し、足りないところを補完できる――とある。今回のケースは③が働いたとも言えるだろう。また、石破首相の「ブレ」がいい方向に作用したとも言える。決断の遅れが大混乱を招いたのも事実だが。



(2025年3月28日掲載)



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