オピニオン
情報化時代の情報提供のあり方
過日、製薬協主催で開催された、医薬品の情報提供のあり方をテーマとするシンポジウムで、次のような発言が相次いだ。「薬についての疑問を誰に聞いていいのか分からない。OTCはメーカーの“顔”が見えるが、医療用医薬品になるとどこのメーカーがつくっているのか全く分からない」「医師からも薬の副作用の説明は受けていない」。これらはいずれも患者団体など、いわば国民代表として列席していた演者の意見。その言葉からは、生活者にとって医療用医薬品の情報が、依然として縁遠い存在である実態が透けて見えた。
「情報化時代」という言葉すら古びて聞こえるほどに、現代社会はあらゆる情報が氾濫し、国境すら越えて、瞬時に飛び交う。しかしそうした時代においてすら、情報を真に必要としている人の元に、真に必要とされる情報が、的確に伝わっているかといえば、心許ないと言わざるを得ないのが実情のようだ。上述のシンポジウムでの生活者の声がそのことを端的に表している。誤った情報、不十分な情報は、むしろ情報の受け手には不利益をもたらし兼ねない。
製薬協は現在、会内のタスクフォースで、医薬品メーカーとしての生活者への情報提供のあり方を検討しており、5月の総会での取りまとめを目指しているという。情報が溢れ返る時代であるからこそ、真に正確な情報提供が求められている。情報を扱うジャーナリズムとしても、改めてそのことを肝に銘じたい。
(2005年4月1日掲載)
前後のオピニオン |
◇個人情報、価値とリスクに化ける (2005年4月15日掲載) |
◆情報化時代の情報提供のあり方 (2005年4月1日掲載) |
◇情報を届ける者の責務 (2005年3月25日掲載) |