オピニオン
新薬創出加算と薬価維持特例
2018年度予算の方向性を定める「骨太方針2017」の策定作業が大詰めを迎えている。薬価制度改革では、製薬業界にとって最重要課題である「新薬創出・適応外薬解消等促進」が、対象範囲の絞り込みを迫られつつも、制度自体の存続は何とか実現しそうな様相を呈してきた。塩崎恭久・厚生労働大臣や経済財政諮問会議の民間議員は、対象範囲を絞り込む方向性で認識を一致。これには日本製薬工業協会の畑中好彦会長も「新薬創出加算の必要性は、一定程度評価された」との見方を示す。
新薬創出加算を巡っては当初、逼迫する社会保障財源を背景に財務省だけでなく、日本医師会などの医療関係団体からも険しい目線が向けられていた。特に財務省は、価格の値引き率の小さい新薬に一定率の加算を行うという仕組み自体に対して、「イノベーションの評価とは無関係に加算がされている」と指摘して、制度の廃止を求めていた。自民党内でも、完全に理解を得られていたとは言い難い状況だっただけに、最悪のケースだけは免れそうな公算が強まった。
ある製薬業界関係者は「『新薬創出・適応外薬解消等促進加算』の名称では、なかなか政府関係者からの理解が得られにくい。制度の本筋は『加算』ではなく、薬価の『維持』だ」と話す。製薬業界側は元々、特許期間中の薬価を維持する仕組みとして、「薬価維持特例」の名称で提案していたが、厚労省との調整を経て最終的には「新薬創出加算」に落ち着いた。別の業界関係者は「制度の名称を再び『薬価維持特例』に戻せば、少なくとも今以上の理解は得られるのではないか」と観測する。畑中会長も5月25日の定例会見で「名称で誤解を受けている点がある」と語った。
(2017年6月9日掲載)
前後のオピニオン |
◇日本卓球の躍進は好事例となるか (2017年6月16日掲載) |
◆新薬創出加算と薬価維持特例 (2017年6月9日掲載) |
◇MRの熱意は重視されない? (2017年6月2日掲載) |