オピニオン
二番煎じ
ここ最近、落語界は例を見ないほどの盛り上がりを見せている。関係者がいうにはこの要因には2つあり、1つは人気脚本家である宮藤官九郎が手がけた落語界をモチーフにしたテレビドラマが好調だったこと。もう1つは、それまでテレビなどでのタレント活動で有名だった林家こぶ平が大名跡である九代目林家正蔵を襲名したことによるもので、寄席には例年よりも客の入りが多いそうだ。
こうして、今注目を集めている落語だが、“薬”が登場する演目もいくつか存在する。『二番煎じ』などはわりと知られた噺で、あらすじはこうだ。
ある冬の事、やむない事情で町内の旦那衆が火の用心の夜回りをすることになった。先に回った組が番小屋へ戻り体を温めていると、実はめいめいが酒や肴を持ってきたという。役人に見つかるとまずいので、酒を土瓶に入れ“煎じ薬”と称して飲むことになった。そのうち、酔いも回り大宴会。大騒ぎのところに見回り役人登場。この役人に“煎じ薬”を何杯も飲まれてしまい困る旦那衆。「煎じ薬はもう切れました」と申し上げたところ、「拙者がもう一回りしてくる間に二番を煎じておけ」というオチ。
現在、寄席で演られる噺の多くが江戸や明治期にその骨格が完成したが、現代においても十分通用するものが多い。『二番煎じ』にしても、役人への対応に苦慮する旦那衆に共感する方も多いに違いない。“薬”が酒であることはご愛嬌として、製薬や医療に携わる御仁も、こうした切り口から日本の伝統文化である落語に触れてみるのも良いのではないか。
(2005年7月8日掲載)
前後のオピニオン |
◇大手町の景観が変わる (2005年7月15日掲載) |
◆二番煎じ (2005年7月8日掲載) |
◇医療制度改革が問うもの (2005年6月24日掲載) |