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「研究開発もスピード、再編もスピード」。今年4月、三菱化学との共同持株会社設立を発表した三菱ウェルファーマの小峰健嗣社長は、発表会見終了後、そう心情を吐露した。昨年来、アステラス製薬、大日本住友製薬、そして第一三共と相次いで大型合併が発表されたが、そもそもの初めから「次の合併をしやすくする」ことを統合の目的として明言したのは、恐らく初のケースだろう。
小峰社長はその意図をこう説明する。「今年から来年にかけてが、『再編・第Ⅰ期』になると思う。そこで、グローバル規模に立候補し得る企業が4~5社でき、それらを軸に、『再編・第Ⅱ期』が起こってくるだろう。欧米を見てもそうだった。当社としては『早くしないと乗り遅れますよ』という姿勢を示したつもりだ」。
アステラス製薬の青木初夫会長も、「グローバル・メガとなるにはもう一段の再編が必要」とした考えを示唆している。「国内製薬産業の再編本格化」と言われるが、実は「国内製薬産業大再編時代」は、まだその緒に付いたばかりだということに改めて気付かされる。
さて、そうなるとやはり気になるのは、製薬企業の命綱である新薬承認審査の「スピード」だ。企業が生き残りを賭けて再編を「加速」させている一方で、ようやく機構の治験相談再開のメドは立ったが、人手不足は相変わらずだし、承認審査も滞りがち。経済課長が、企業の合併を促す発言をあちこちで触れ回るのもいいが、まずは行政としての責任を果たしてほしいというのが企業の本音だろう。
(2005年6月3日掲載)
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