オピニオン
医師免許更新制と日医
政府の規制改革・民間開放推進会議が第1次答申の追加答申に「医師免許の更新制導入の是非について05年度中に結論を出す」という文言を盛り込もうとしたことについて、日本医師会の植松治雄会長がある講演で「国家資格には弁護士、歯科医師、薬剤師、公認会計士などいろいろあるが、なぜ医師だけ更新制を持ち出そうとするのか理不尽だ」と糾弾したという記事を読んで愕然とした。
医師は人の命に関わる職業である。勿論、歯科医師、薬剤師等も同様だが、診察、治療・手術、処方薬の裁量権を一手に握っている医師とは人の生死に関わる度合いは比して異なる。そのうえ、同じ国家資格とはいえ、人の生死に直結しない全く別次元の職業である弁護士、公認会計士などを持ち出して医師の更新制反対を説くというのは言語道断で、会長の言葉そのものが理不尽だと言わざるを得ない。
医師の更新制は欧米では主流だ。医療ミスを繰り返す「リピーター医師」の医療過誤が相次ぐ日本でも更新制の導入は急がれる。推進会議は欧米に倣って自動車免許のように一定期間ごとに医師に研修や適性検査などを求める仕組みを導入しようとした。厚労省もこれに同意していたが、日医が「政治活動を展開して抹殺」(植松会長)した。「一部の不心得の医師のために免許更新するのは全く意味がない」というのがその理由だ。
日医は代替策として、厚労省の制度とは別にリピーター医師を再教育する独自制度を本年度から開始すると先日発表したが、更新制を導入した方が医師全体の技量と判断力が底上げされより一層医療の質が高まり、日医が基本理念とする「患者本位の医療」に近づけると思う。日医は国民に導入是非を問うてみるべきではないか。
(2005年4月22日掲載)
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◇こいのぼりに思う (2005年5月6日掲載) |
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◇個人情報、価値とリスクに化ける (2005年4月15日掲載) |