オピニオン

米国のドラッグストアの惨状から学ぶべきことは

 オールジャパンドラッグチェーンは6月11日にチェーン全国大会を開き、組織の新体制を発表するなど、変化が求められるドラッグストア(Dgs)業界に向けた情報交換を行った。大会では4期目の本部長に選出された平野健二氏(サンキュードラッグ代表取締役社長兼CEO)による米国のDgsの現状が報告された。Dgs業界は古くから「米国のDgsに学ぶ」ことをビジネスの起点としており、そのフォーマットを取り込むことで成長の原動力としてきた経緯がある。平野本部長は「今こそ、米国の状況をトップが知らないといけない」と切り出した。会場のモニターに投影されたのは、製品がほとんど陳列されていない棚、食品が全く入荷せず、電源すら入っていない冷凍食品のショーケース、レジカウンターの周辺であっても片手で数える程度の陳列、製品はおろか店員の姿も確認できない店内など、消費大国とは思えない“惨状”が映し出された。スライドを前に平野本部長は「あらゆる場面で従来のビジネスモデルが崩壊している」と指摘し、その背景には価格競争が限界まで到達し、店舗の優位性が活かせなくなっていることや、インターネットでの販売が普及し、製品を自宅まで配送してくれることの優位性などで、店舗が空洞化しているという。また、処方箋調剤においては、大規模ないわゆる調剤工場が稼働し、わずか3人の薬剤師が何万枚もの処方箋に対応。加えて調剤過誤の発生も機械化により極限まで減少し、過誤発生率ではほとんど0であると解説。この状況がそのまま日本で発生するとは言い難い認識も示しつつ、「メーカーとブランドの淘汰」、「ネット販売の拡大」に加え「地方都市における物流の問題」などは既に顕在化しつつあるとの認識を示した。日本のDgs産業は長年の目標として「10兆円産業化」を掲げてきた。早晩、この目標は達成されることが確実視されているが、悲願達成とは裏腹に、人口減少社会や限界集落の拡大など、米国とは違う市場環境の変化が日本には控えている。目標を契機に、成長曲線を日本独自のものへと変化させるタイミングに差し掛かっていると言えるのではないだろうか。



(2025年6月27日掲載)



前後のオピニオン

◆米国のドラッグストアの惨状から学ぶべきことは
(2025年6月27日掲載)
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(2025年6月20日掲載)