オピニオン

#WeNeedCultureムーブメント

 昨年、入院をした。親身に対応してくれた医療従事者の方々には感謝してもしきれないが、やっぱり不安だった。手術の朝、恐怖に呑まれないようラジオを聞いた。日中は本を読み、消灯後は落語に耳を傾けた。それでも夜中に目が覚める時には、音楽を鳴らした。入院生活の不安のそばには、文化が寄り添っていた。
 現在、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府からの自粛要請により、演劇やライブハウス、ミニシアターを始めとする芸術・文化のあらゆるジャンルで存続困難な状況が発生している。実際に私も、楽しみにしていた演劇や落語、音楽の興業がいくつも中止になった。
 そんな中、「文化芸術復興基金をつくろう」とする#WeNeedCultureムーブメントが動き出した。日本の文化を守るべく、第2次補正予算に向けて、国に文化芸術復興基金の創設などを要請するという。立上げのシンポジウムでは、音楽レーベルを主催する角張渉氏が「クラウドファンディングもさかんだが、限界がある」と訴えていた。彼は、星野源氏のブレイク前を支えてきた一人だ。星野源氏の動画コラボは、自粛期間において文化が存在する豊かな喜びを証明する象徴だったと言える。
 文化・芸術は、生活に最も遠いコンテンツと思われがちだが、生活と共にある心の必需品だ。ストレスフルな生活の中で、文化・芸術がもたらす影響は計り知れない。また、文化はコミュニケーションを生み、さらに豊かな心を育む。この灯を絶やさないよう、#WeNeedCultureの動きに賛同したい。



(2020年5月29日掲載)



前後のオピニオン

コロナ禍での都知事選
(2020年6月5日掲載)
◆#WeNeedCultureムーブメント
(2020年5月29日掲載)
新型コロナで揺れる承認審査
(2020年5月22日掲載)