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高血圧症患者が、ある日突然一念発起した。医者が強くすすめる食事療法・運動療法を共に一気に取り組みだしたら、長年手離せなかったクスリからみごと解放された。 決して珍しくはないはなしだが、実行率はよくない。誘惑社会に住む生身の人間なるがゆえの弱さ、よほど意思を強く持たないと清く正しい生活習慣は身に付かない。 ところがである。こんな聖人君子のような生活を保証してくれる特殊な環境が実は我々の近くに存在するのだ。残念ながら、そこは自由はきかない。そこでは、精神的にも肉体的にも、そして社会的にも全く自由を剥奪される。そう、そこは監獄である。 そこで過していると、例え少々の病身であったとしても日増しに、代謝指標が改善され、ついには、服薬生活から解放される例が少なくないという。 福島刑務所の男性受刑者4千人余を対象とした最近6年間の医療記録がそれを実証している。インスリン治療者18人中の5人が、そして経口血糖降下薬服用者34人中の17人が投薬中止に成功している。 受刑者は週5日、1日8時間の労務に従事し、食事はというと高セン維の麦飯。こうして規則正しい生活習慣が長期間続く。 人間本来のライフスタイルとしては、自由を満喫しつつ、おいしい食事とリラックスした運動を基盤に当然趣味にも没頭できる、こんな姿が普通なのだけれども。 最近、かねてから話題になっていた民営の刑務所がオープンした。東日本初、栃木の社会復帰促進センターでは、蔵書2万冊の図書館を設けるなど、民間ならではの処遇向上策が施される。 更に、ここでは高齢受刑者用に、東北大教授監修による「脳を鍛えるトレーニング」が活用される。百マス計算や文字のなぞり書き、パズルなど脳を活性化し、行動、感情の抑制や認知症の予防に役立つという。 現状病態が改善されるだけでなく、フラワーアレンジメントやストレッチ体操等で、予防医学的な効果も期待できるというのだから、見方を変えれば、いわば絶好のコンドミニアムに暮らすセレブのようでもある。 自由環境で健康体を維持することのなんと難しいことよ。
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