メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
医言放大
 
iPadで様変わり、医学教育
 
   一般向けに華々しく登場したiPadであるが、医学分野でも発売当初から利用度が大変高まっている。特に教育用として研修医個々に支給され、目覚ましい成果をみせている。
 医学教育者は、国内外問わず同時にその性能に目をつけ、素早く取り入れた。
 スタンフォード大では、2010年の新入生91人に即支給、その使われ方を見守っている。
 収載された教材は、仮想死体、講義スライド、医学雑誌記事等々多種多彩、これらを学生がどう活用するか、というわけだ。
 医学知識は常に変動、更新される。膨大な量の情報にどうアクセスし活用するかが課題だ。授業のスライドを全て保存し、必要な時に瞬時に取り出し、復習、理解を確実に積み重ねていく。新入生世代はITに全て精通しており、今回の新兵器導入はごく自然発生的なものと評価していいようだ。
 中間調査報告としては、利用者91人中68人が講義のメモ取りにiPadのみを利用しており、他はノートパソコンなどの利用もみられる。
 基本的に、医師は移動職務であり、診療間或いは患者間を常時行き来する。既に、現場医師からは機器としての利便性を高く評価する報告が多数あがっている。
 日本国内の利用状況としては、青森県のむつ総合病院が、新入局研修医8名へ貸与、活用中。10年4月発売と同時に導入を模索開始した俊敏性には感心させられる。
 情報はとにかくこれでもかと満載状態。勉強会資料、治療マニュアル、薬剤添付文書等々。まずはこれら膨大な情報の中から、瞬時に必要なものをどう引きだすかが問われるが、現場では、なにかと忙しい研修医にとっては時間的利便性に於いて、大変な好評価だ。
 神戸大消化器内科では、ローテーション研修医に貸与、特に3Dメガネの活用が威力を発揮している。教科書の変面画像(2D)をはるかに凌ぐ教育効率の高さがすばらしい。
 更には、診察時、患者への病態説明用にも役立っているし、愛媛大病院の整形外科では、機器自体を患者に手渡し、問診票を作成してもらう利用方法まで工夫し活用を広げている。次々と発せられる質問に対し、当てはまるものにタッチするだけですむから、子どもから高齢者まで幅広く対応できる。
 こうして、超難解な情報管理から極めて易しい利用法まで、工夫次第で自由自在に活用できる新機器は、今後共限りなく発展し続けることであろう。医療の質と効率を飛躍的に改善する魔法の端末として。

(2012年1月13日掲載)
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(2012年1月27日掲載)
◆iPadで様変わり、医学教育
(2012年1月13日掲載)
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(2011年12月23日掲載)