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アトピーとは、ア(否)とトーピック(普通)の合体語で「普通ではない」「病的な生まれつきの過敏症」であることを意味している。 このようなアトピー素因のある人は、皮膚が極めて乾燥しており、ささくれだって強い痒みのある皮膚炎を発症しやすい状態。適切な治療により回復はしても、その後の管理を怠るとすぐに悪化してしまう。 つまり、皮膚炎が幸い軽快して表面的にツルツルになったとしても、組織学的には血管周囲のリンパ球浸潤などの炎症所見は残材している。 「油断すればいつでも以前のヒドイ湿疹状態に戻してしまうぞ」と、秘かにスキを狙われているのだから始末が悪い。 アトピー性皮膚炎は、本質的にはがんの管理と一緒で、寛解状態にあっても油断は禁物。 専門的には、寛解維持療法としてのプロアクティブ療法なるものが、治療ガイドラインで確率していて、予測シナリオ通りに行動する。かってのリアクティブ療法(湿疹に応じた塗布法)と異なり、先手必勝がいかに勝れているか明白である。 さらに、これまでアトピーに「出来るだけ汗をかくな」が鉄則であったが、最近、この指導が全く逆転してしまった。 汗については、古来アトピー性皮膚炎の増悪因子として、極力これを避ける方向で考えられてきたが、それが大きく方向転換、「積極的に汗をかく方がアトピー性皮膚炎の皮疹の改善につながる」ということに。またまたきのうまでの医学常識が非常識化したのだ。 大阪大・皮膚科では、日常生活の中で、少しでも発汗の機会を持つよう勧めている。とはいえ、かいた汗はそのままにはせず、水で洗い流すか、濡れた布で拭き取るよう指導している。その点で、保湿剤や抗炎症薬などでの薬物療法を行う。 こうして、慢性化していた苔癬化病変が、1か月後著明に改善した症例が数多く得られている。 汗には体温調節や保湿及び感染防御などの医学的効用のあることが再確認され、さらには、汗と皮脂とが混じり合って構成される皮脂膜が、皮膚の恒常性を維持するという重要な役割があるという。 なお、杏林大・皮膚科では、積極的な発汗により幸い皮疹が改善した症例において、発汗を控えさせるようにしたら、また皮疹が出現するようになってしまった症例を発表している。
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