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がん死とか心筋梗塞とか通常示される死因は、あくまでも表面的なものであって、その背後にはそれに至ってしまった根幹の問題が控えている。 健康対策として、メタボリック・シンドロームが、いま社会の重大な関心を呼んでいるが、厚労省が健康確保のために最優先課題として取り上げたこともあって、またメディアも積極的に取り扱い、国民の認知度は一気に上昇した。 成人病、或いはそれが改称された生活習慣病と本質的には何ら変わることはないが、横文字の目新しさと、ウエストサイズの危険信号として男性85センチ、女性90センチなどと具体的に呼びかけたこともあって、取り組みやすい社会的要因はかなり整った。 だが、この人気に嫉妬したわけではあるまいが、実は喫煙こそが最大の死因なんだヨ、だからタバコ対策こそメタボ対策より優先されなくてはならないだ、と奮然とアピールする人がいる。日本禁煙学会の理事の立場にある人で、有名医学法にその主張論文を寄せており、タバコこそが働き盛りの日本人男性の命を脅かす“ナンバーワン・キラー”であると断じている。 まず、これまでのいくつかの疫学調査結果をもとに、その事実関係をはっきりさせ、特に最近実施された茨城県民調査について詳しく触れている。ここでは、喫煙者の全死亡リスクが非喫煙者より2.1倍高いことを指摘、高血圧者が正常血圧者より1.5倍危険度が高いことよりも注目すべきだとアピールする。更には、高コレステロール血症や肥満等の死亡リスクに対しても、喫煙リスクの方が上回っていることをあげ、メタボとの差を強調する。 メタボサイドの問題としては、そのシンドロームに陥ることでどれほど死にやすくなるのか、という研究成果が、スウェーデン男性を30年以上も追跡した興味深い調査がある。メタボによるトータルの死亡リスクの増加率は約30%という結果である。だが、これに対しても、タバコではそのリスク増加がなんと92%という歴然たる差で少しも動じない。 こうして、メタボ対策を云々する前に、日本人3千万喫煙者対策を最優先すべきであるとする主張の方がより重みが感じられる。となれば、当然のことながらメタボ、メタボとアピールするその陰でタバコ問題がくもらされてしまうことになんとも我慢がならなくなるわけである。 今、日本は先進国中最高最悪の喫煙率状態にあり、そこから脱却すべく数値目標を設定しようとしたが果たせないでいる。 世界には改善に成功した、或いは成功しつつある先進国がいくつかある。日本も毅然たる態度で施策推進を図ってもらいたいものである。
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