|
「トンズランス」 レスリングや柔道等、接触度が特に高いスポーツ愛好家に大変嫌われている新型白癬菌の一種で、頭部や体部に紅斑を作る。 我が国には、西暦2000年早々某大学柔道部に侵入、集団発生によりその存在を世間に知らしめた。そもそもは中南米土着の頭部白癬でアメリカ、ヨーロッパを経て拡散した。 極めて感染力が強く、国際的な激しいトレーニング交流や世界大会が頻繁に開催されるにつれ、我が国にもついに侵入、今後の蔓延が心配される。 始末が悪いのは、発症しないまでも「無症候性キャリア」としての潜伏。選手のみに限らず、家族、友人等親密な人々に知らないうちに感染を拡大させてしまう恐怖。「最近フケが増えた」とか「頭が痒い」とか、急に訴える人がいたら要注意である。 大相撲も大変なコンタクトスポーツに違いないが、今のところまだまだ閉鎖性競技ということもあって、激しいながらノートラブル。だが、何らかのルートで1人でもキャリアが入りこめば、被害はたちどころに拡がり、一場所休場という危険も考えられる。 そこへ最近気になるニュースが。アメリカでレスリング選手70人を対象に血液検査を実施したところ、その13%・9人にB型肝炎の不顕性感染が認められた。B型肝炎ウイルスは、これまで血液さえ注意していれば、と思われていたが、汗からもそのDNAを検出、汗媒体による感染が明確にされた。 コンタクトスポーツでは、スリキズ、キリキズは当たり前、その上お互い大汗もかくので感染リスクが高いのは云うまでもない。結果、アメリカのスポーツ団体では、特にコンタクトスポーツ選手に対して、肝炎ウイルス検査を、常に積極的に実施するよう指導、更には、予防策としてワクチン接種を義務付けるよう働きかけている。 最近、レスリング選手にB型肝炎の不顕性感染有病率が高くなっており、その背景としてドーピング疑惑問題がある。つまり、筋肉増強剤としてのアナボリックステロイドの使用が思わぬ悪影響を与える。ステロイドによる感染隠蔽作用が影でからんでいるのである。 ドーピング疑惑もない、白癬やウイルス感染も一切心配ない、クリアーな白熱戦がいつも心おきなく楽しめる、そんなスポーツ界が確立してくれたらありがたい。
|