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健康を維持するため、まず基盤となるのは高血圧対策。年代に応じた適切な血圧数値管理が未だに話題になるなど、高血圧研究に終わりはない。 高血圧といえば、必ず食塩摂取が話題にのぼり高血圧研究の歴史をきざんできた。 特に古来、日本人庶民は、漬物、乾物等をこよなく愛する塩分過剰型食生活で、昭和初期の1日摂取量は、20g以上、時に30gにも及んだと伝えられている。戦後、食生活は大幅に改善され、最近では1日10g程度で落ちついている。 結果、脳卒中の発症は激減し、疫学研究で食塩との因果関係が明確に証明された。 もし更に1日3gの減塩生活ができたら、どの程度の健康改善のメリットが得られるか、アメリカ国内での試算数字が一流誌に紹介された。 年間、約9万人の虚血性心疾患、約5万人の脳卒中、約8万人の心筋梗塞が予防でき、約7万人の命が救われるという。結果、約15兆円(円換算)も医療費が節約できるとしている。 こうして健康増進のために、WHO、そして日本高血圧学会も、1日6g未満がのぞましいと目標値を定めた。 だが、この6g未満にすることの是非については反対論者もでて単純には収まっていない。 例えば、イギリス・ロンドン大の研究者マックG氏は6g未満容認派だが、アメリカ・カリフォルニア大のマックC氏は猛反対、激論がたたかわされている。ただ、「アメリカ高血圧ガイドライン」では、既に6g以下の推奨がなされている。 6g未満反対の根拠は、減塩によって血圧低下はみられるが、臓器保護に結びつく科学的証拠がないとし、むしろ、厳しい減塩が心疾患の発症に関連するとアピールしている。 減塩研究が医学的に押し進められることについては大いに結構である。だが、あまり食塩摂取制限が行き過ぎると、折角のグルメが艶消しになりかねない。 医学の神様がそのへんの落としどころを十分わきまえてくれたらいいが。
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