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三大死因の顔ぶれは少しも変わらない。だが、その中味はガラリ様変わりした。2位心疾患、3位脳卒中はしぶとくその悪業ぶりを発揮しているが、それでも医学の進歩により、そこそこで留まっている。 問題は断トツ1位の癌だ。81年、トップに踊り出て以来、その勢いは全く衰えることを知らず、ついに全死亡者の30%を超えるに至った。2、3位両者の合計数に余る年間33万人もの死者を作っている。 こうなると、だれでも極力癌を恐れ、そのリスクのある生活条件を避けたいと思うのが人情というものだろうが、不思議やふしぎ、多くの人がリスクの高いタバコを手離そうとしない。 数多くの疫学研究は、喫煙者の発癌リスクは吸わない人の1・6倍と結論付けている。仮に、日本人男性喫煙者が全て禁煙できたとすれば、理論的には全男性癌患者の3割は発症予防可能と試算されている。 リスク1・6倍は決して低い数値などとは侮れない。被爆による爆心1㎞以内の発癌リスクとほぼ同等だと聞けば、その恐ろしさがジワリ実感できるはず。 広島、長崎に原爆が落とされて、日本は世界唯一の被爆国となったが、生き残り被爆者はその多くが発癌により落命している。また、職業的には、発癌性を高める点でダイオキシンの曝露が有名で、このリスクは1・4倍とされている。 タバコを吸う人吸わない人の発癌については、こんな見方もある。 双方100人ずつ、40才時点から25年追跡し、吸わない人でも20人が発癌、1人が肺癌になる。だが、吸っている人では、32人が発癌し、5人が肺癌になるという。喫煙者の肺癌確率は5倍であり、できれば吸わないに越したことはない。 タバコ関連疾患による死亡者は、世界で年間約500万人にものぼり、そのうち我が国は10万人をかぞえる。その約10分の1に相当する交通事故死に伴う経済的損失が約6兆7千億円(04年)と公表されている。煙害による損失が如何に莫大な金額となるか推して知るべしである。 金額もさることながら、貴重な生命がムザムザ失われ続ける煙害実態には何とも釈然としない哀しみがわく。
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