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研修医の多くは、それまでは大学医局に所属し大学病院で腕を磨きながら、医局から割り振られるアルバイトで細々生計をたてていた。 こうした研修医の生活が、数々の歪みを生み、2004年新しい研修制度が発足、今年で10年の節目を迎えた。 研修は大学病院に限られることなく、希望する各地の病院を選択、晴れて採用の暁には安定した給与が保証されることとなった。 だが一方で、社会的には問題点がいくつか指摘された。例えば、自由な病院選択が、地域偏在や診療科偏在を助長したとの批判だ。 今回10年1区切りの成果がどうであったか重要ポイントを検証してみる。 まず主な成功面では、新制度が7科を回る総合診療方式必修化で診療能力が幅広く身に付き、専門科を選びやすくしたのは好成果。 さらには、アルバイトが禁止され、金銭的処遇面で大きく改善されたことは、心身面を安定させる上で極めて有効因子となった。 労働基準法の規定により、研修時間は1週40時間、1日8時間を超えない。推計年収は2011年度で1年次が435万円、2年次が481万円と生計は保障され、中には955万円と超高額な例も現れたが、即是正方針が。 一方、失敗面も。その第1は、これまでより一層地域偏在が助長されたこと。 研修先を自由に選べるようになり、普遍的疾患を数多く経験できる都市部の市中病院が人気化、大学病院研修医はかつての7割から4割へと急減した。 やむなく医局は、これまで関連病院に派遣していた医師を引き戻さざるを得なくなり、地域病院は丸ごと或いは診療科が突然閉鎖されたりして、地域医療の混乱を招き、医療崩壊という新語も生まれたほどである。 但し、数度の見直しが繰り返され、研修医定員が大巾に超えていた6都道府県中心に減員調整を緻密に実施、偏在是正が順調に進んでいる。 新制度発足当初の偏在は、地域だけでなく診療科の偏在も引き起こしたが、各科を回ってどこが楽かを知り、そこへ流れる傾向がでたのは致し方のないところ。 数々の手直しにより、減少傾向にあった産婦人科、外科、小児科の各科が、それぞれの学会の後押しもあり、徐々に回復傾向がでてきて一安心。とり分け、小児科は女医増員と集約化の推進で労務環境が改善、急速に回復が進んでいる。
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