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出生率の低下がようやく収まりかけたようだが、まだまだ理想的な姿にはほど遠く、日本の将来がなにかと心配される今日この頃である。 だからといって、子どもならどんな子でもというわけにはいかない。 いつの頃からか、巷には「小さく生んで大きく育てる」という風潮がまことしやかにはびこってきている。これが実は思いのほか大きなリスクを含んでいることを、我々は厳しく認識しなければならない。この現実に直面すれば、無理に小さく生んで大きくなんていう考えは捨て去る気持になるに違いない。 しばらく前まで「成人病」といっていた呼称が「生活習慣病」と言い改められた。悪い生活習慣を続けていると、例え子どもでも肥満を経て糖尿病等メタボ関連疾患に簡単に罹り得る。 だが、今回言わんとする警鐘は、乳幼児期よりもっと前、つまり胎児期にまで遡っての注意だ。その時期、妊産婦が栄養管理に気をつけずにいると、成人病の芽が育ってしまうという超早期警告だ。 この「成人病胎児期発症説」は、そもそも20年も前にイギリスの大学教授・バーカー氏が最初に唱え始めたものである。だが、当時はほとんど理解されず、それこそバカにされていた。それが10年前、アメリカでこの説の正しさが、多くの疫学調査により認められ、俄然世界中が注目することとなった。 ポイントは、誕生後に行われる細胞分裂。何十倍もの大規模分裂数を、胎児期は一気に集中的に処理してしまう能力の違いにある。 この極めて濃密にして貴重な胎児期に、栄養状態が不十分だと、遺伝子発現制御システムに悪影響を与え、出産後に各種障害発生の大きなリスクとなる。 憂うべきは、若い女性の間に蔓延している「やせ願望」。妊婦までをも、その罪深き考えは浸透し、結果、新生児の低体重にまでつながっている。 全世界的にみて出生体重が低下しているのは日本だけという指摘があるのは実に由々しき問題である。この悪状態が続けば、将来日本は成人病患者で溢れかえってしまうかも。 少子化の歯止め策が、ただ単に出生率上昇のみに目が向いているようではいけない。問題の本質は子どもの健康にある。折角生まれた子どもが健全でなければ親も国家も禍根を残す。 本研究に詳しい諸外国の学者陣は、我が国の将来に対して次のように警告している。 「次世代の成人病が世界で最も多発する国は日本である」と。日本危し。
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