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一昨年、東京・武蔵野のある中高一貫校で35人もの集団結核感染者がでた。体調不良を訴え受診している生徒がいたが、X線撮影等の適切な診断が行われず、結核発病が判明したのは5つ目の医療機関、実にお粗末の極みである。 かつては「国民病」或いは「亡国病」として猛威を振るっていた蔓延状態も、50年頃より普及し始めた化学療法により激減はした。だが、なかなかにしぶとく、未だに年間の新規登録者は約2万5千人を数える。人口倍のアメリカとほぼ同数で決してあなどれない。99年には3年連続罹患率上昇に転じ、厚労省から「緊急事態宣言」が発令されたほどであり、外国からは“結核中蔓延国中開発国”なんて不名誉なことを言われている。 我が国の結核罹患率は人口10万人当たり約19人であり、欧米先進国の10人未満のほぼ倍、厳しく評価されるのも致し方あるまい。 罹患率は地域格差がかなりあり、大都市で高く、地方小都市では低い。最も高いのは今何かと話題の多い大阪で、人口10万人当たり32人と高率。この面でも大幅改善に向けみごと手腕を発揮して欲しいものである。ちなみに群馬県は約10人にとどまっている。 罹患率サイドから他に注視すべきは、まず性別差。男性が女性より2倍も多い。更には年齢別差が大きく、加齢によりかなり上昇する。 70歳代で人口10万人当り41人、80歳代では88人と跳ね上がる。結局、新規患者数の内訳として、70歳以上の高齢者が約半数を占めている。加齢とともに免疫力が低下し、内因性再燃による発症が疑われている。昔の猛威時代の亡霊が現代まで尾を引いているのがうらめしい。 国民の多くは、結核患者の“激減”を“撲滅”できたかの如く錯覚しており、マスコミから急に結核のニュースが流れると、“今さら”とか“未だに”なんていう驚きの声が聞かれたりする。 この点は、「結核はしぶとく生き続けているのだ」と、正しく再認識してもらわなくてはなるまい。一般国民もさることながら、この厳しい状況は、社会の第一線にたつ医療従事者には十分使命感をもって正しく把握し適格に対応してもらわなくては。 結核の主力3症状は、咳、喀痰、発熱。特に、妙な咳が2週間も続くようなら、まずは胸部X線写真を撮ることがすすめられる。
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