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世界の至る所で、常に争いごとが起き、そのたびに何の罪もない民衆が戦禍を避け流浪する。こうした明日に希望を持てない貧しき人たちのことを難民と呼ぶ。 時に平和ボケの日本と言われようと、これに無縁の我々は実に幸せなことと思っていた。だが、医療福祉の世界を細かく分析してみると、戦争、災害等とは異質の難民が多数存在することに気付く。 最近の新聞に「がん難民68万人」の見出しがデカデカと踊った。ドクターの説明や治療方針に納得できず、いくつもの医療機関をさまよい歩くがん患者のことを、「日本医療政策機構」というNPO法人が「がん難民」と定義付けたものである。その数が意外に多く社会的関心を大きく呼んだのである。 あっちこっちで受診する結果、平均受診機関は3軒になるという。 医療費は、定着患者の5割増となり、医療費増加の大きな要因とされている。もし、この難民が全て解消できれば、年間5千億円強が削減されると試算され、定着させることの大切さを解らせてくれる。 こうした難民を多数発生させてしまった張本人として国立がんセンターがやり玉に上がっている。「見放された」と不満を吐く患者が決して少なくないのだ。がんが再発したり終末期になったりして、治癒の見込みがなくなった患者を積極的に診なくなるからという。 「自分で病院を見つけて下さい」とつき放されれば、難民化するのは当然。一旦受け入れたのであるから、緩和医療を重点的に取り扱う施設にスムーズにバトンタッチする誠意と責任がのぞまれる。 また、日本医師会が最近緊急調査した報告では、「介護難民」及び「医療難民」なることばが新たに紹介され、それぞれ4万人及び2万人の存在が明らかにされた。 病状面からは退院が可能だが、在宅あるいは施設の体制が整っていないため発生してしまうのが介護難民であり、一方、病状的に厳しい状況にあり医学的管理ないし処置が必要でありながら退院を迫られる患者のことを医療難民としている。 いずれにしろ、日々心の安らぎの得られない状態が続く難民の苦悩は、戦時下であろうが医療福祉界であろうが同じである。 その他、社会を広く見渡せば、保育所体制にも大いに問題があるようだ。施設数が足りず、「待機児童」と言われる、要するに「保育難民」が全国に2万人もいるという。 働く女性の増える中、ママのストレスを異常に高めないためにも、高齢者介護問題も含めて、社会構造改革は常に有効適切な方向を求めて前進していって欲しいものである。
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