メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
医言放大
 
21世紀型“腰痛”への取組み
 
   腰痛治療は、近代に至るも相変わらず苦戦を強いられている。最新の検査機器をもってしても、その病因の何たるかを掴みきれない。
 そのため、腰痛の多くは、世界のスタンダードの分類でも、真の病因が特定しきれない「非特異的腰痛」とされている。
 現在、最も大きな診断のよりどころとしているのは画像所見で、その形態学的異常だけを重視した治療ではなかなかラチがあかない。
 そこで、機能的な障害を追求する方針に切りかえる。腰部への機械的ストレスが、脊椎の障害をもたらし、心理社会的ストレスとなって脳への障害を起こす。脊椎、脳の両障害の共存に対応すること、これで腰痛治療につなげようとする考え方が主流だ。
 筋骨格系疾患は人間の活動を阻害するが、中でも腰痛はその最も大きな位置を占めるとWHOは言う。さらに、厚労省公表の業務上疾病発生状況等調査(休業4日以上)によっても腰痛の件数が最も多い。
 他の全国調査でも、腰痛の生涯有病率は、83・5%と高率であり、腰痛のため仕事を休んだことのある人が4人に1人、4日以上連続で休んだことのある人が10人に1人とある。
 すなわち腰痛は、実に大きな社会的損失をもたらしているのである。
 解明の比較的進んでいる椎間板変性症にしても、未だ病因を的確に突き詰め、整合性をもった理論付けの確立までには至っていない。
 そんな中、国内外からユニークな予防・治療法が相次いで発表され注目されている。
 まず外国からは、慢性非特異的腰痛に対するヨガの活用。これまでの運動療法より明らかに効果的で好評だ。
 また、舞台俳優・アレクサンダー氏の考案した「アレクサンダー・テクニック」といわれるものが発表され、心身の無駄な緊張を是正する方法として評価が高い。イギリスの大規模無作為化比較テストにより、慢性或いは再発性腰痛の管理に有益な手段であることが証明された。
 一方、国内からは、「これだけ体操」というユニークな簡便予防法が紹介され注目されている。ポイントを超簡単に解説すると、長時間の作業で腰に″何か″を感じたら、もしその時立ち作業をしていた場合は″腰を3秒間かがむだけ″、また、座り作業をしていた場合は″腰を3秒間そらすだけ″と実に簡単。借金はその場で即返しなさいと説いている。

(2015年1月16日掲載)
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(2015年1月30日掲載)
◆21世紀型“腰痛”への取組み
(2015年1月16日掲載)
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(2014年12月19日掲載)