メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
医言放大
 
難病リウマチの終焉
 
   趣味仲間K氏の奥さんがリウマチを悪化させて亡くなった。新婚の蜜月生活さめやらぬうちに発病、日一日と悪化する一方通行で、苦しみ続けた呪われた一生だった。
 朝、指が妙にこわばり、足が思うように動かない。痛さと不自由さの辛い日々が続く。
 妻として母としての役割を何も果せず、ハウスキーパーを雇い、2階家にはエレベータを設置、24時間風呂釜は4台も買い替えた。
 有名医師のもとへ次々渡り歩いたが全く改善せず、不治の病魔と闘い続けた苦悩はまさに底無し沼。悲哀に満ちた辛い日々を回顧しつつ彼は深いため息をついた。
 人間のQOLを最も低下させるもの、それは逆説的にいえば、からだの機能の中で最も便利な器官・関節の自由を奪うことであろう。それも猛烈な痛さを伴って-。
 こうして、人類をさんざ苦しめ続けてきたリウマチによる関節破壊行為にもついに終焉を迎える日がやってきた。
 近代科学研究の成果、遺伝子組み換え、及びモノクローナル抗体作製という2大バイオ技術を駆使した生物学的製剤の華々しい登場で、これまでの治療体系は一変した。
 不治の病とされてきた、さしもの関節リウマチの関節破壊の進行が阻止され、寛解、或いは治癒を目ざす最終段階にまで一挙に進展したのだ。
 これまではステロイドなどによる消炎対症療法しかなく、全身の関節が徐々に変形、日常生活動作の自由が奪われるのを、ただただだまってみているしかなかった。
 原因療法として病気を正面からやっつける特効もさることながら、“10年短命”を宿命付けられていた平均余命を、一般人同様に延長させた成果も実に大きい。
 100人に1人は罹患すると言われるリウマチは、まずはそれを早期に正しく診断する能力が極めて重要。というのは、本剤は早期使用開始が大きなポイントとなっており、一旦破壊されてしまった関節は元に戻れないからだ。
 リウマチまがいの関節炎はいくつかあり、正確な診断は、専門医でないとそう簡単にできるものではない。ポイントは熱感を伴う関節部の炎症だというのだが-。
 疑いのある場合は、日本リウマチ学会認定の専門医300人が頼り。早く正否の診断を仰ぎ、適切な治療に早期着手できるかどうかが鍵だ。

(2011年10月28日掲載)
前後の医言放大
積極的治療が第一選択か
(2011年11月11日掲載)
◆難病リウマチの終焉
(2011年10月28日掲載)
汚染牛肉とポテトチップス
(2011年10月14日掲載)