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「うちの子どもをなぜリレーの選手にしなかったのか」 昔は不満には思っても、教師に面と向って暴言を吐く親はいなかった。今は時には暴力を振うケースもあったりして「モンスター・ペアレント」の出現が社会問題化している。 新任教師が一人また一人と自殺に追い込まれるに至ってはもはや看過できない。 小・中・高の教職員の病気休職者が06年で7千人余りいて、うちうつ病等精神疾患が6割を占める。これが14年連続で増加中で特効薬も現われないままお手上げ状態にある。 モンスター・ペアレントとは和製英語で、本家アメリカでは「ヘリコプター・ペアレント」として、日本より約10年古い歴史がある。学校の上を常に旋回しつつ、問題があれば直ちにどなりこむという構図だ。 日本版モンスターの芽はバブル期にあった。校内暴力時代を経験し、その時教師の人気が一気に低下した。教師を馬鹿にしてしまう風潮、精神構造は、子どものことよりも、むしろ親自身の欲求不満として現われており、問題解決を一層複雑化している。 モンスター・ペアレントと全くよく似たエゴ丸出しの現象が、医療機関にもみられる。「モンスター・ペイシェント(怪物患者)」と呼ばれ、医療従事者は戦々恐々とした思いで日夜これと対峙する。 本来、人の苦しみをやわらげ命を救う、感謝されるべき立場にあるはずなのに、いわれなき難くせをつけられ、逆に命をも狙われるとは・・・。 心やさしい人たちの集団としては、その突発性暴力にどう対処したらよいか。警察OBを雇ったり、チームで対応すべくマニュアルを用意したり、更には監視カメラや非常警報ベルを新設したりと、悩みは尽きない。 看護師は夜、消灯時間だからといって不用意にスイッチに手を伸ばすことにも注意が必要だ。薬を飲もうとしていた患者がキレていきなりナイフを突きつけた、という実例が報告されてもいる。 こうした恐怖体験をすると、気のやさしい看護師等ではPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症することがめずらしくなく、シンマイ教師のうつ病対策同様、きめ細かい精神的サポートが必要となる。 アメリカの大統領選挙戦で、クリントン女史をモンスターと中傷して有力スタッフが辞任した事件があったが、モンスターとはそれほど重みのある言葉であり、その暴挙はしっかり阻止しなければならない。
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