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共かせぎでクタクタに疲れた若い主婦が、帰宅して一番にとる行動は、我が子を力の限りぐっと抱きしめること。これで母親は、どんなに疲れていても、そしてどんなストレスも一気に吹き飛ばすことができる。 一方、限りない母の愛を感じ取った子どもは、健全な成長のためのさまざまなメリットを心底から体感することができる。 こうした情景は、小動物ラットの世界でも観察することができる。母ラットは子ラットを巣から取り出し、手でなでまた巣に戻す単純作業をしばしば繰り返す。 何度も愛撫された子ラットの方は、巣にそのまま置かれ続けた子ラットより、不安が少なく身体的によく育つという。 ところで、子どものいない主婦の場合はどうすればよいか。友人との交流、或いは相談等の集まりから、社会的支援を求める手段を通じて情動的に癒される傾向を追い求めるという。 アフター5で、女性が三三五五連れ立ってジョッキ片手に語り合う光景が、今や少しも珍しいことではなくなったが、彼女達はそこで男性以上にストレスを発散できているのかもしれない。 つまり、女性は子どもへの情愛行動も含めて「情動焦点型のストレス対処法」を専らとるというわけだ。 一方、男性のストレス解消法はどうか。 仕事に疲れた父親は、一般的には一人で部屋に閉じこもり、趣味や嗜好等孤独化の傾向が強い。男性は、仕事の量や質の変化、労使関係等にストレスを感じることが多く、つまりは「問題焦点型のストレス対処法」を用いることになるのだ。 男女差を示す医学的背景としては、計算課題を施行中の脳血流を調べたデータがある。 男性では、右前頭葉の血流量が増加するが、女性では、情動を司る辺縁系の血流量が増加、ストレス処理行動の形式とみごと一致する。 近年、メンタルヘルス上の理由により、連続1か月以上休業、或いは退職に追い込まれたサラリーマンのいる事業所が8%近くにのぼり、それに関連し自殺者数も12年間連続で3万人を超えている。 メンタルヘルス対策が、真剣に検討されるわけだが、ストレス反応には、はっきりした男女差があり、それぞれに対する的確な対応策が求められる。
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