|
「案ずるより産むがやすし」とはよく言うけれど、女性にとって出産は人生の一大イベント。それなのに、折角授かった我が子を愛せないという大変悲しい疾病がある。 「産後うつ病」がそれだが、現状、出産女性の8%、約12人に1人に認められる。なんとか少しでも防止する手立てはないものか、少子化時代に少しでも安寧に育って欲しい希望も込めると、大いに気になるところである。 子どもには健やかな成長を期待したいし、産褥婦にしても、“産後の肥立ちが悪くて”なんていうつまらない事態に陥らないよう,順調な回復を心から祈りたい。 それでも、生身の人間の悲しいところ、どうしても体調を崩すケースが出てきてしまう。昔からよく云われる「マタニティブルーズ」は、出産女性の約4人に1人が体験すると云われる。出産後3~5日して、どういうわけかメソメソと涙もろくなる。だが幸いなことに通常は長く続かず、数日間のブルーな落ち込みの後は気も晴れ、貴重なイベントの一環として思い出の一頁を飾るのである。 対して、ともすれば混同されることのある「産後うつ病」はまるで別物であり、時には母子の命を危うくするケースも少なくなく、決して軽視はできない。食欲減退、不眠をはじめ多彩な症状が伴い、重症化しやすい点に十分配慮しなければならない。 それでも、発症率自体は、日本は外国よりも比較的少ない方である。古来より根強く続いている「里帰り分娩」の伝統がよい結果につながっているわけだが、残念なことに、産後一か月して実家から戻る頃に「産後うつ病」は好発することが知られている。こうした実態をふまえるのであれば、更に一か月程度実家での滞在を延期させたいもの。そうすれば体調も落ち着き、発症率を大幅に減少させることができるはずである。 産褥婦にとって、夜間の授乳は極めて大変な作業であり、うつ病との関連で特に重要視される。その睡眠障害のことを考えれば、当面の厳しい育児期間を、実母の協力等を仰ぎながらスムーズに乗り切ることが大変重要な要素となってくる。 また、今の健診システムが産後一か月、及び4か月というのも少々考えものである。その間に産後うつ病の発生をみることが多いからで、産褥婦の精神状態を効果的にチェックするためには健診システムの変更を考慮すべきであろう。
|