メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
医言放大
 
早期発見・対策が天地別れの鍵
 
   男が年をとりどうしても経験することになるのが前立腺の病気。肥大症は60才以上の高齢男性にとって最も頻度の高い泌尿器科疾患であり、同時に、前立腺がんにも進む可能性が高く大いに悩まされる。
 実際的には高齢域に入ってからの印象が強いが、スタートは既に30才代で密かに芽吹きゆっくりと成長を続けるという。
 従って、それを如何に早い時点で確実に発見できるかがキーポイントとなる。
 7年前「天皇陛下が前立腺がんの手術」というニュースが突然報じられ、国民にとっては大変関心の高い疾患となった。順調な経過は、早期確定、早期治療が何よりの決め手となったことを物語っている。
 早期発見により手術や放射線で根治術のルートにしっかりのせてしまえば完治が可能だが、モタモタして進行させてしまうと、その差は天地ほどの違いとなり、とんでもなく苦労することになる。
 こじれた前立腺がんは骨転移へと悪化することが特徴的にみられ、そのいわゆるがん性疼痛は極めて激しく、まさに筆舌に尽くし難い苦痛を味わうハメに陥る。
 そこで、その生き地獄を何が何でも避けるために確実な予防策を講じる必要がある。進行がんにさせてしまうことは何よりも恐いことであり、男性なら、ある程度の周辺知識は持っておいた方がよいだろう。
 通常は、50才代から臨床がんとして具体的に認識されるようになり、60才代以降には厳密な診断の必要性のピークを迎える。
 前立腺がんの診断方法としては、「3種の新器」といわれる特異的な3手段がよく利用される。
 その第1は「直腸診」。疑いをもたれた時、まず泌尿器科医からズボリと指の挿入をみまわれる。その感触具合から専門的判断が下るわけだが、正直これのみでは早期がんを見過すことが多く、併行して別の検査も行われる。
 第2は、検出率が極めて高く、確定診断上必須アイテムの「経直腸的超音波断層法」。小さな前立腺の内外を詳細に描きだし、外来でも迅速・簡便、そして非侵襲的・経済的と非のうちどころがない。
 そして、第3が「PSA(血清前立腺特異抗原)」。客観性、感度に優れ、今や最も重要視されている。単独でスクリーニングに利用され、数値4以上でグレーゾーン、50代以降なら本検査へと進む。
 女性は50才頃ともなると、更年期障害やら乳がんやらでいろいろ悩まされるが、とにかく早め早めの対策が、うまくのりきる決定的なコツであることはまちがいない。

(2010年7月9日掲載)
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