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65才以上高齢者の10人に1人は認知症といわれ、現在約180万人を数える。発症は、70才代5%、80才代20%と加齢と共に増え、85才以上では30%と跳ね上がる。 国連は、2050年時の世界を分析し「日本は、先進国の中でどの国も経験したことのない『群を抜く高齢化国』になる」と指摘する。 急速な少子高齢化が着実に進む現代、「ストップ・ザ・ニンチショウ」は、憂慮すべき日本の国家的重要課題となっている。 特効薬の登場を、今かいまかと祈る今日この頃だが、それでも、何とか早期に手を打てば、病状進行をくい止めるか、大幅に遅らせることが一部可能な情況になった。 最近、女優南田洋子女史の緊急入院が報じられた。夫・長門裕之氏の心労いくばかりかと同情はするが、一言苦言を申し上げたい。 先にTV特番で、女史の痴呆症を公表し、氏の懸命な介護ぶりが報じられたが、問題は発症時のあまりにも遅い専門医への相談。TV登場の著名医も厳しく指摘していたが、今となっては実に残念でならない。 痴呆症の診断は、専門的にはいろいろあるが、それ以前に、診察室での独特な素振りが大変参考になるという。 まずは「振り向き動作」。質問をすると、家族の方をしきりに振り向くという。 次に「取りつくろい動作」。質問に表面上、実にうまく対応するが、実は中味はうそっぱちだらけ。例えば「畑仕事を毎日している」に対して「本当に毎日か」と聞くと、「雨や雪の日はしない」などとバケの皮がすぐ剥がれていく。 また「バレーサイン」という動作も興味深い。両手の手のひらを上にしてバレーボールを受け取る如く前に差し出し、眼を閉じると、麻痺のある側の手が次第に下がっていく。これにより、脳血管性認知症による軽い麻痺が発見できる。 「立ち去り行動」というのも極めて特異的だ。興味や関心が薄れると、まだ診療中だというのに勝手に外へ出て行ってしまおうとする。これを遮断しようとすると、しばしば暴力行為に及ぶことも。 認知症に関わる介護費用は莫大で、15年後は年間10兆円を超えるとの試算がある。一方で、介護の労働人口は激減しつづけ、このまま手をこまねいていては、認知症によって日本社会は崩壊するかも、という物騒な予測も聞かれる。 しかし、さしもの「不治の病」も「治療可能な病」に大きく変貌する期待もなくはない。
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