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入院したからにはとにかく病気を1日でも早く治してもらうことが絶対条件。だが、入院が1日また1日と長引くとなると、治療、看護以外にも、いわゆる二次的なサービス面にも自然と目が向くようになる。 「必要なものはありませんか」毎日午後3時頃になると、決まって病室に訪ねてくれる地下売店の御用聞きは、ベッドから離れられない病人には大変ありがたいサービス。 一方で、漸く点滴台をガラガラ引っぱって歩けるようになってトイレへ入ったはいいが、狭くて開けっぱなしにして用を足すようでは、細やかな設計サービス面では失格だ。 毎日3度の食事も極めて大切な要素。昔の病院食は、夕方5時の早過ぎる夕食とか、冷飯とかでさんざん不評を浴びていたが、今では大きく様変わり。病院栄養士もいろいろ工夫をこらし、レストラン顔負けのオイシイ料理を提供、外部の一般客も常連になるほど。 入院も長引くと自宅に居る時同様、病院生活の質があれこれ気になってくる。もし思い通りにならないことばっかりでは、それはすべてストレスとなって治療を妨げることに。 長期入院は当然お金の心配も。そこで治療費支払いに関する相談にのってくれる専門家(金融コンシェルジュ)をおく病院も現われている。 長期病院生活に際しては、次々とこれまでにないユニークなサービスが生まれている。 患者や家族、医療スタッフなどの心をアートの力でサポートしようとする取り組みとして、「ホスピタルアート」があり、また、子どもの心のケアを行う専門職として「ホスピタル・プレイ・スペシャリスト」がある。 また、類似の資格として子ども療養支援士などを認定する団体も各種ある。 さらに、心理学や医療現場の知識を持つ道化師として、病室を訪れ、患者や家族、医療スタッフを交え、さまざまな遊戯を提供する「クリニクラウン」なども。 また、「院内クリーニング」を設置する病院も増えている。コインランドリーで洗濯するのは意外と重労働、パジャマなどのアメニティをレンタルでき、手ぶらで入院もOKに。 こうして病院が、最近実施するようになった数々の注目サービスを見ていると、病院が治療・看護を仲立ちにした接客サービス業という色彩が急に色濃くなってきたように感じる。これからの医療サービスは、「癒やし」をトレンドにして進展していくことであろう。
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