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健康を巡るアメリカ最大の課題は肥満問題に尽きる。エモリー大学のまとめによる08年時の成人の肥満率は、31%と高率であり、このまま推移すると、この10年後の18年には43%に達すると重大警告を発した。 だが、もし10年後も現行の肥満率に留めておくことができれば、約20兆円の医療費を浮かすことができるとも併せて公表した。 オバマ自身は大変スマートで健康上何の心配もなく国内外を飛び廻っているが、国民の豊かで健康な生活をリードしなければならない大統領としては、QOLの原点として肥満蔓延はなんとしても阻止しなければなるまい。 ユニークな肥満防止策が次々と提案されているが、いざ法案決定となると、各界各方面のさまざまなしがらみが立ちはだかって、なかなか具現化できないでいる。 その最も代表的な例が「甘い飲料に新税を導入する案」。極めて優良な案件と注目を浴びたが、産業界の強硬な反対にあってあえなく撃沈。 また別に有力な案として、健康改善目標を達成した国民には、保険料を軽減、報賞を与えるとの妙案もでたが、どういうわけか差別という理由がつけられ、みごと封じこめられてしまった。有効適切なアイデアとして魅力的に思えたのだが・・・。 こうして次々と潰され続けてはいるが、医学的見地からすればどれも立派に評価されているものばかり。はるか遠国からの傍観者ではあるが、誠に残念に思えてならない。 「アメリカ心臓学会」は、「肥満や心血管疾患の予防に、清涼飲料等の甘味食品の摂取量を大幅に減らすべきだ」と声明を発表、政府をあと押しするが、今のところその成果はあがっていない。 当学会によると、アメリカ国民1人当たりの現行の砂糖消費量は、1日平均111gにのぼるという。それに対し、学会の提唱する適正上限量は、女性30g、男性45gにすぎない。毎日如何に過剰摂取しているかということだ。 学会は、各食品に砂糖量表示ラベルの義務づけをFDAに要請したが、今のところその動きはない。 タバコでの大成功を見習って、ニコチン量ならぬ糖分量の表示、健康被害の情報提示、更には大幅な課税にまで発展すれば、国民の甘味食品に対する関心は一気に高まるであろうが。
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