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睡眠に悩みを持つ人が大変多い。成人の20人に1人が睡眠薬を常用、しかも長期に亘って服用している人がますます増えているのだ。 さらに困ったことには、1人当たりの薬剤服用量がエスカレートする一方にあるということで、睡眠医療は実に深刻な状況にある。 長期大量服用者となっている自分に、不安を感じている人が多数存在するわけだが、そんな中で、おかしなことにおおむね眠れているのに眠れていないと訴える、つまり誤認患者が大勢いるという指摘がある。 睡眠状態の誤認とは、脳波上は睡眠状態にあり、見た目にも寝ているのであるが、本人は眠っていないと訴えるもの。程度の差はあるが、不眠を訴える患者のほぼ全員がこうした状態を示すというから実に不思議な現象だ。 こうした現象のあることは、患者個々にとって十分認識する必要があり、徒らに薬を増量しないよう、睡眠ポリグラフ検査などの実施も視野に入れて、専門医の指導を十分仰ぐべきであろう。 多施設共同の調査によると、思いきって断薬を試みる患者も多数いるが、約半数は失敗すると報告されている。 そもそも睡眠薬を服用するに至ったきっかけは、そのほとんどは基礎疾患があってのこと。心理的ストレスで眠れない状態が続くと、体内環境が変化、つまり、入眠前に生ずるべきはずの深部体温の低下が乏しくなり、体内に熱がこもって入眠が困難となる。 不眠症の治療では、最終目標を明確にすることが大切、真のゴールは「日中QOLの維持」にある。睡眠薬を減量する場合も、覚醒時の良好な活動が可能かどうかが肝心だ。 複数の薬を用いている時は、半減期の短かい方から半錠ずつ減らし、2週間程度ずつ様子をみながら進め、いずれ単剤のみを目ざす。 不眠だからといっても全て不眠症患者でない場合も。慢性不眠を訴える患者の約1割はレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)との報告もある。 現行使用されている睡眠薬の処方ベースとしては、その4分の3がベンゾジアゼピン系が占める。だが、最近の傾向として効果と副作用のバランスを考慮し、処方方針を見直す方向がでてきた。 特に、高齢者には、ベンゾジアゼピン系は転倒、骨折のリスクが高く他系統のものが勧められる。
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