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世界中で、うつ病で苦しんでいる人が、人口の約5%に当たる3億5000万人以上に上るという推計がある(WHO・2012・10・9付)。 WHOは、うつ病とは「一時的な気分の落ち込みとは異なり、2週間以上ふさぎ込んで、仕事や家庭での活動に影響が出る病気」としている。 うつ病は多くの自殺者を生みだす元凶でもあり、仕事、家庭に対してこれだけ多くの人が、前向きに取り組めないということは、実に莫大なる経済的損失である。 最近「新型うつ」という言葉がよく使われる。「会社に行けないが、自宅では楽しく趣味に没頭する」姿は、表面的には、まさになまけ者、サボリ屋そのものであり、WHOのいううつ病とはだいぶニュアンスが異なる。 こんな若者によく見られる抑うつ状態を「新型うつ病」と言い出したのは、実はマスコミサイドからで、つまりは「マスコミ用語」。うつ病学会は、新型うつ病という診断名は、医学用語ではない、と明言、一線を画し、更に次なる見解を示している。 新型うつは、現代型うつなどとも呼ばれ、社会問題として報道される。抑うつに加えて無気力で、他人が悪く自分は悪くないという自己愛が強く、仕事への情熱が薄いというのが典型像と説明している。 一般的な日本人像としては、勤勉で働き者であり、組織への帰属意識が高い真面目人間というのが、誰もが認める典型的姿である。だが、バブル崩壊後、これは残像と化し、うつ病患者の病像も一変することとなった。 真面目な勤労者がストレス過度で疲労困ぱいした後に生じる日本独特な精神不安状態はもはや影をひそめることとなった。 昨今は精神科受診の敷居が下がったことで、以前は診療対象ではなかった軽症の抑うつ・不安状態の患者も気軽に病院に訪れるようになった。同時に、アメリカ精神医学会の診断基準が日本に普及拡大し、これまでの方式とのギャップを調整するのに、診療現場は大混乱している。 いつなんどき、うつの恐怖に襲われるかも知れない複雑高度情報社会ではあるが、精神科のオピニオンリーダーは、日常の生き方の指南として次のように説く。 「生活にメリハリをつけることが大変重要。適度なストレスは人間が生き生きと生活するためには不可欠なものであり、ストレスと休養のバランスを保つことが重要なポイントとなる。」
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