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我が国には、約3500万人もの高血圧患者が居て、それに丁度対応するが如く、ゆうに3000万台以上の家庭血圧計が普及している。 指式、手首式、上腕式と種類はいろいろだが、健康志向の強い国民性を反映して、各家庭共1台は保有している勘定だ。 病院で血圧を測られ、本来より高値にでてしまう現象を「白衣高血圧」というが、帰宅しゆったりとした気分で測定すると正常。そんな家庭血圧の存在に一安心するケースが多多ある。 こうした家庭血圧計による医療経済的効果は大変大きく、5年間でおおよそ3兆円の医療費が削減されると考えられている。 但し「家庭血圧計」の扱われ方をみると、まだまだ不十分、未成熟と思われ、なお一層工夫の余地がある。折角の「家庭血圧」の数値を医師に見せない患者が4割もいて、医療管理に反映されていないのははなはだ勿体ない。 医師が患者から聞きだす努力をしていないのも問題だが、もっと深刻にとらえるべきことは、家庭血圧診断基準に対する認識の甘さである。 「家庭血圧」値では、上値135ミリ以上が高血圧とされているのに、これを正しく認識している医師が3割に満たないとは実になさけない。更に、患者サイドの認識度にしてもたったの2%、まさに高血圧診断の基準なんて有って無きが如きもの。 高血圧にからんで、厚労省が調査したものに「NIPPON DATA」という、名称からしてなかなかのデータがある。 80年と90年と2回実施した循環器疾患に関する基礎調査を、更に最近になって追跡調査したものである。ここで明らかにされたことは、血圧水準が高いと、それに比例して循環器疾患で死亡するリスクが高くなるという明確な相関であり、そのリスクは全年代共血圧値と鮮かに比例している。 なお、リスク回避のためには、収縮期血圧が120ミリ未満であることが最も望ましいとされている。 NIPPON DATAは、若年者から高齢者まで、終生血圧水準が高くならないような生活習慣を身に付けることが大切、と教えてくれている。 家庭血圧計が折角高度に普及しているわけだから、医師患者共よりよくこれを生かし、経済的効果をあげられるとよい。何よりも、それにより自ら健康を引き寄せられることが大きい。
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