メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
医言放大
 
増える女医
 
   医師国家試験合格者の3人に1人は女性である。10年前は4人に1人の割合であったが、その傾向は次第に強まっており、何だか高齢者増加の社会福祉構造をみているようでもある。とにかく女医は増え、今後10年もしないうちに新卒勤務医の半分は女性が占めることになるだろうと、確かな予測がある。
 こうした方向性は政府目標でも明確に打ち出されており、“男女共同参画会議”なるものでは、来たる2020年までに“すべての分野で指導的立場の女性を30%に高めよう”との明確なスローガンが揚げられている。
 既に、さまざまな現場で成果が見られており、これまで女性進出があまり見られなかった建設、不動産、法律等、男の領域にも女性経営者のもと女性だけの小集団組織がいくつも見られ、厳しい経済社会にもかかわらずみごとな黒字経営を果たしている。  経営トップが女性である場合、社員構成も同性に偏りやすく、その71%が女性との統計成績がある。もっとも男性トップの場合でも、男性社員が69%を占めているとの数字もあるくらいだから、どっちもどっちといえなくもない。
 医療分野では、女性特有の疾患なり悩みというものがあり、なかなか異性男性医師には話し難かったり、理解され難いなどの微妙な問題がある。そこが“女医による女性専門外来”の本質的な狙いであり、全国各地にバタバタと新設が続いている。大学病院だけでも既に11か所が正式受け入れをスタートさせており、増加一方の女医の受け皿として好都合である。
 だが、女性外来といえども医療使命の根底としては他科と本質的に変わるものではなく、必要があれば、腕の良い男性医師を紹介するなどして、個々の患者に最善の医療がなされるように配慮すべきであろう。世の注目を浴びて始まった専門外来ではあるが、同性だけの枠にこだわることなく、総合医療の窓口的存在として軽妙に気持の余裕をもって運営して欲しいものである。
 また、医師であろうと女性であれば当然結婚はするであろうし、子どもを産む。産休も育児休暇も必要となってくる。
 昔から女医は小児科、或いは産婦人科に進むケースが多く、当然のことだが同僚との勤務のやりくりに多大な困乱を生じさせている。保育施設、フレックス制度等の不整備で小児科閉鎖等の不幸に発展したりもしている。
 女性集団の会社が、現在は好調であっても規模が拡大していけば同性だけのこだわりは経営リスクの心配も生むだろう。
 男女雇用機会均等法もできたことでもあるし、同性、異性のメリット、デメリットをよく見定め、工夫を出し合って巧妙に乗り切りたいものである。

(2005年10月7日掲載)
前後の医言放大
“疲労”を客観的に捉える
(2005年10月28日掲載)
◆増える女医
(2005年10月7日掲載)
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(2005年9月30日掲載)