メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
医言放大
 
食っちゃ寝でもメタボ知らず
 
   新入社員も早や4か月を超え、〝五月病〟は無事のりこえられただろうか。梅雨の6月は、うつうつと過ごしていなかっただろうか。
 一日中憂うつで何をしても悲観的になるなど、極めて異質な状態となると、これはもうレッキとした精神疾患「うつ病」である。
 短期間にいきなりここまで重症化することはないとしても、「新型うつ」と呼ばれる前駆症状も心配。これは医学的病名ではなく、いわゆるメディア造語ではあるが、現代のストレスフルな社会にあっては、油断していると簡単に落ち込む人が大勢いる。異変を感じたら早めに心療内科などへの受診をすすめる。
 異変の2大徴候は、「食えない(食欲不振)」と「寝れない(睡眠障害)」。
 健康な人間なら当たり前の、日中の〝食〟と夜中の〝睡眠〟がスムーズに機能しなくなるのだから、即手当てが必要だ。
 
 一方、〝食えない〟〝寝れない〟に対する真逆な食いまくり寝放題の天然人も大勢いる。通常こんな人は、うつ病には無縁でも、メタボを経てかずかずの慢性疾患の必発が待ち構えている。
 だが驚きの研究がただいま進行中。オイシイ料理をたらふく食べて、全く運動しなくても、ぶくぶく太りもしないし糖尿病など全く心配しないで済むという夢のような話だが、近い将来実現しそうなのである。
 東大グループが鋭意研究を進めているもので、現在はマウスを使用した動物実験の段階。ある夢の物質(A)を経口投与すると、カロリー抑制が働き、同時に、からだが運動をした時と同じ状態に調整、結果的に健康を保ち寿命を長くすることができたというのである。
 この画期的発見は、既に昨年、有名科学誌ネイチャーに掲載され、世界中の専門家から多大な関心が寄せられている。
 この科学誌には、日本人発の論文として、例のSTAP細胞の一件も相前後して掲載されているが、この注目の報告についてはなんとしても正夢であって欲しい。
 ヒト実験に移っても同じ効果が得られるか、妙な有害事象が発生しないか。
 高カロリーでオイシイグルメが氾濫する近代社会の中で、思う存分真価が発揮されるよう今後の研究の進展を見届けたい。

(2014年8月22日掲載)
前後の医言放大
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(2014年9月5日掲載)
◆食っちゃ寝でもメタボ知らず
(2014年8月22日掲載)
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(2014年8月1日掲載)