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「中」という字は、的中などとして使われるように「当たる」という意味があり、熱中症は熱にあたるということである。 そもそも、熱中症が世界的に注目されるようになった大きなきっかけは、死者が4万人とも5万人ともいわれる2003年のヨーロッパ熱波襲来による大被害である。 なぜこれほど多くの犠牲者をだすことになったのか。新世紀に突入したとはいえ、当時ヨーロッパでは家庭も病院もクーラーをほとんど備えていなかったことが、最大の根本原因といわれている。 この悲劇が発生して以降、ヨーロッパでは行政が責任をもって熱中症(ヒートストローク)対策を行わなくてはいけないと、この機に考え方を大転換したと伝えられている。 重症型熱中症は、30%以上もの死亡・後遺障害発生を示すことから、それ相当の防衛知識をもつことが必須である。 熱中症は、運動や仕事の場で起こるばかりでなく、むしろそれ以上に、通常の生活の場で多く発生しており、いつでもどこでも悪条件が揃えば発症のチャンスとして狙われている。 地球温暖化に加え、都市部ではヒートアイランド現象が加速しており、気温が体温より高くなる事態が生ずる。その上、我が国では高齢化も強く関与しており軽視はできない。 昨年の東日本大震災による原発事故で、夏場の節電が声高に叫ばれており、エアコンなどの使用も控えざるを得ない状況では、予防のための賢い知恵と工夫が試される。 屋内では、高齢者がエアコンを控えることにより、いわゆる「古典的熱中症」の多発が心配される。一方、屋外作業者用のためにはエアコンの効いた休息場所の設置が必要とされるが、節電影響により十分使用できないことが懸念され、働き盛りの労働者、或いはスポーツマンが「労作性熱中症」を続発させる危険性が危惧される。 熱中症は予防が可能であり、暑熱順化の工夫が何よりも大切。一日で熱中症になるというよりも、連日の熱帯夜等で体力が奪われ、食欲が落ち、脱水が進み、持病の悪化も相俟って、発症に陥るというパターンが考えられる。 深部体温の上昇に気付きにくい高齢者が、エアコンの使用を過度に控えることにより、“節電”熱中症に陥らないよう、本人はもとより周囲の人が十分配慮してあげなければならない。
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