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「几帳面、生真面目、仕事熱心……」 うつ病になりやすい人といえば、こんな愛すべき社会的な優等生があげられる。そして、頑張り過ぎて発症、というお決まりのコースが待ち受けている。 彼らは、他人に助けを求めるのが苦手で、一方では、秩序や規律に従順、遵守するのがあたりまえと考える。これが典型的な「メランコリ親和型」といわれるタイプである。 だが、近頃これが大きく変質している。 社会人として当然素直に受け入れなければならない秩序や規律に対して、妙にストレスを感じてしまうひねくれた輩がやたらと増えて物議を醸しているのである。 自らの希望が叶えられないと病的ジレンマに陥る新種・新型のうつ病が目立ち始めてきた。これまで挫折とは縁遠く、ノホホンと育ってきた免疫ゼロの若者が、突然、社会の反撃に会い発症する。名付けて「気分変調型」と呼ぶ。 社会に適合するのが難しく、嫌なことにはやたら逃げ回り、すぐ人を非難する救い難い性格である。従前のタイプは素直で極めてカウンセリングしやすかったが、ニュータイプは大変手間がかかる。 「甘えることはできても、他人には文句しか言えない」ようでは、実に始末が悪い。 カウンセラーが根負けして、うっかり手を抜こうものなら、ひねくれて衝動的に自傷行為に走ることも専ら。しかも、困ったことに抗うつ薬がこの新種には効き難いときている。 慢性化しやすく、大変厄介な病気と専門家は嘆き、すっかりお手上げ状態。 従来のうつ病は、大変な苦悩を体験した後の、いわば“正当産物”といえようが、対して、新型うつ病は我がまま最優先で格別の苦脳も知らず、いわば“偽物産物”。正面からうつ病と言える資格はない、のである。 そんな嫌味を吐きたくなるようなニュータイプ患者の急増で、専門医もなかなかご苦労なことである。医学校で習得した知識やこれまでの常識が通用せず嘆きもて余す。 専門家がそんな状態だから、一般内科等の非専門医師レベルではまるで手におえない。ましてや、我々一般人では、こんなタイプに罹患した知人、友人等には手の差しのべようがない。 我がままはほどほどに、時にはじっと我慢する忍耐力を養ってくれなくては。
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