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薬は安ければいいというものではない。少々高くともズバリ効いて早いとこ決着をつけてくれなくては困る。 高血圧患者は巷に溢れており、降圧剤市場は薬剤全体の10%を優に越えている。開発は切れ目なく、高薬価新薬が次々と使用される。 降圧剤は、99年6600億円から05年8600億円と2000億円(3割)も増大した。 中でも格別目立っているのが、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬といわれるもの、これが降圧剤全体の4割を占める。 表面だけ見ると、本剤が医療費押し上げの大罪人のように写るが、そう単純に決めつけられないのが医療経済の難しいところ。 高血圧症はさまざまな慢性疾患の根源、なんとしても確実な降圧効果が強く要求される。その上、降圧療法は超長期に亘るものであるから、臓器保護に優れたものがのぞましい。 本剤は、この有効性と安全性、両用に優れた、現在最高レベルの降圧剤と評価される。本剤が投与されることにより、血圧が安定し、心筋梗塞や脳卒中等、メタボ疾患発症がどれほど制御されるか計り知れない。 ただ、新薬なるがため高薬価であり、受診率、受診継続率が低下してしまうのが現実的に悩ましいところ。ある調査によると、患者の約6割が長期・高薬価に負担を感じており、実際4割近くが通院回数を減らすと考えている。医師に相談するのは7%に止まり、突然の通院中止とは実に悲しい。 低受診率は重症化率を増大させ、長期的にまちがいなく医療費を増大させる。 この方程式が良くも悪くも、本質的なところで相通じ合うのが、ワクチン政策である。 最近開催された日本小児感染症学会では、肺炎球菌ワクチン接種により高い費用対効果があげられると試算している。 接種費用に総額約300億かかるものの、それによって削減される直接効果(感染症に対する医療費)は、約690億円と算出され、差し引き390億円もの経済効果が得られる。 なお、更に間接効果として生産損失なるものの削減額が加わるとして、総合した費用対効果は莫大なものとなる。 医療費については、当面の支出経費に惑わされることなく、緻密で総合的な経済学がしっかり検討されなくてはならない。
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