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テレビが登場して50年。いま我々は、あまりにもどっぷりとこの見事な文明器にはまり込んでいることに気付く。TV局の仕掛人がこれでもかこれでもかとぶつけてくる興趣的で魅惑性に富んだ面白番組に、朝から晩まで釘付け状態の人も珍しくない。 結果、運動不足、肥満による生活習慣病を発症させてみたり、視神経への悪影響等不健康への道すじは誰の目にも明らか。それでもこの問題、大人の場合は自業自得、自らの責任と自覚で適切に対処する余地が与えられる。 困るのは子どもの場合。知恵も工夫も適切に対応するには十分ではない。思ってもみない悪影響が発現してしまう現実に対して、自業自得だなどとつき放すわけにはいかない。 子どものTV視聴時間が長時間に及ぶと、言語発達遅滞はおろか、自閉症、多動性障害等の問題児を作ることが医学的に次々と明らかにされている。7才の多動障害児の疫学調査では、1才或いは3才の時点でのTV長時間視聴がその原因であったと報告され、実に戦慄させられる。家事が忙しくて、子どもに直接かまってやれない時、ついつい「テレビでもみてて」などと言ってしまうことは、しばしば見られる家庭風景である。 子どもがTVに親しむことは、言葉を覚え物知りになるとついつい思いがちだが、実はこれはとんだ勘違い。実際は、情緒言語発達遅滞・テレビ育児症候群を出現させる大きな原因になるとは・・・。 順当に言葉を覚え、諸感覚運動体験を身につけるには、親子遊びが最善という。 英才教育あるいは電子ベビーシッターなどという美名のもとに、英会話ビデオなどの教育ビデオを長時間与え過ぎるのは絶対避けるべきである。 テレビ、ビデオに親しみやすい幼児期が過ぎ、学童期に入ると、それらに加えパソコンゲームも加わり問題は更に深刻化する。 バーチャル(仮想現実)の世界では、人を傷つけても殺してもボタン1つでリセットが可能、ために暴力が危険ではなく遊びになってしまう。ディスプレイとの対話は不登校、ひきこもりを作り、キレる子の増加につながっているという。 体力低下、学力低下問題も含めてどれもこれも、この半世紀発展し続けた「テレビ・ビデオ文化」が、大きく関与していることには違いない。 将来を憂える一部外国では、学校教育の中にメディアのあり方を批判的に考えるカリキュラムが数年前より組み込まれている。日本でも、例えば「ノーテレビデー運動」など、具体的に目に見える対策を早急に始めるべきと考える。
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