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インフルエンザの治療を巡って、第一線医師の間で少なからず混乱が見られ、このままパンデミックなんてことになるとおおごとだ。 抗ウイルス薬発売初期に於ける誤解が多くの医師に見受けられる。画期的製品として登場し大々的に使用されたのだが、不幸なことに耐性株が一時100%といわれるほど大きく広がり、一般医家の間で未だにその時の印象が強く残っている。 その後、耐性株は一掃され、全世界的にその心配は払拭された。だが一度染みこんだ印象が抜け切らず、折角の薬をあらためて使おうとしない医師が大勢いる。 抗ウイルス薬に対する次なる大きな誤解は、副作用扱いの「異常行動」に関する問題だ。これも発売初期商品Tの服用者に、異常行動が発生するリスクがあるとして、厚労省は、10才代への処方制限措置という通知を出した。服用中、突然起きだして走り回り、時には窓から飛び下りるという自殺まがいの行動が見られるということで、社会的にも大きな衝撃を与えた。 だが、その後多くの研究発表が出され、この異常行動が、抗ウイルス薬の服用の有無とは一切関係なく、未服用者でも、同程度の発生率で起きている現象だということが明らかになった。 厚労省は、その旨の通知を直ちにだすべきであったが、未だに制限解除措置がとられていない。現場医師の疑問、誤解が続く原因の1つにもなっている。 結論的には、インフルエンザ罹患の際は、薬剤を服用していようがいまいが、10才前後、つまり小・中・高校生に対し一定期間特別監視する必要があるということだ。 抗ウイルス薬は、現在市販されているものが4種類あるが、全国の第一線医家の全てがこれらの内服・吸入・点滴の使い分けに関して正しく情報を入手して、自由自在に扱うテクニックを身につけて欲しいものである。 さて、この西洋薬に勝るとも劣らない漢方薬のあることにも触れておかなくてはいけない。 解熱時間やウイルス消失率などについて、抗ウイルス薬と比較し、全くヒケをとらないのだ。 しかし、効果的な漢方療法には、漢方独自の診断概念である「証」を考慮した治療が求められる。漢方を取り入れる医師が、着実に増えているが、なお一層の普及が期待される。
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