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アテネオリンピックでは、予想外の日本選手の頑張りについつい引き込まれ、眠れぬ夜を過ごした人が多かった。そんな熱いあつい夏も終って涼しい秋の到来、とたんにぐっすりと眠れる夜を過ごすことになる。 問題は、清涼にして抜群の睡眠環境が整ったというのに、なかなか寝つけない人が少なからずいるということ。信頼すべき調査で5人に1人はいるという不眠症は慢性化させると大変恐い。 不眠の背後にはうつ病があり、それがいま社会問題化している自殺の増加に直結している。なにしろ、うつ病の9割に不眠が潜んでいるというし、慢性不眠を訴えて受診する患者の約半数はうつ病との臨床報告もある。 とにかく、不眠はそのまま放置しておいてはいけない。その対策の重要性からいって当然のことであろうが、健康雑誌には「快適な睡眠のための7カ条」とか、医学誌にも「働く世代のための快眠10カ条」などの睡眠指針が大々的に示されている。 当然、共通部分が多く、内容的にも、睡眠に苦しむ人たちはそれ相当に理解もし、研究もしていることと思う。 最近、これらの項目の中には見当たらない「夜の運動法」なるものが、目新しい睡眠手段としてすすめられていたので紹介する。寝る2~3時間前に、汗ばむ程度の軽い運動をし、深部体温を1度近く高めることが良眠を得るのに大変効果的だという。体温が下がり始めると同時に睡魔が訪れる睡眠生理学の狙いをダイナミックに利用しようとするものである。「歩き」「自転車こぎ」「ストレッチ」何でもよい。その後、ぬるめのお湯に浸かれば更に効果は増す。 ライフスタイルの中で、不眠と最も関連の深いのは「運動習慣の稀薄」だとする指摘がある。昼、運動の機会がなかなか得にくい人は、夜、僅かな時間でも軽く汗ばむ程度の運動を即実践することをおすすめする。 人は誰でも多かれ少なかれ悩みをもって生きているが、通常それは一晩グッスリ眠ることでスッキリ解消される。 だが、この唯一の慰めがすんなりと得にくいとなると、出口の見えない悲観、自責の念が襲い、ついには「永遠の眠り」を欲してしまうことにもなりかねない。 安らぎの根源は安眠にある。それを害する不眠は何としても近づけてはならない。絶対慢性化させてはならないのだ。 睡眠医学の研究は最近急激に進化した分野の一つである。専門医が必ず安眠をプレゼントしてくれるはずである。
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