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医療界で表立った活躍をする臨床面からみたら、基礎系に属する病理部門は、あくまでも縁の下の力持ち。 疾病の本態を明らかにする、なくてはならない領域でありながら、長らく地味な部門で頑張ってきたが、6年前「病理診断科」として、診療支援部門から分離、独立、ついに診療部門の1つとして仲間入りを果した。 〝病理〟が公然と標榜できることとなり、内科、外科のように、一般の人にも徐々にその存在が知られるようになってきた。 つまり、保険診療適用となり、病理科としての市中開業や、総合病院内での病理外来などで活躍できることとなり、病理医が直接患者に接する機会が生まれたわけである。 とは言え、全国的には〝一人病理医〟の病院が大半であり、しかも高齢医が多く、現状としても、また将来的にみても極めて寂しい状況にある。 患者から採取した細胞や組織に基づいて診断書を作成、これなくしては治療が全く進められないケースも多々あり、病理の仕事は極めて質の高い職務を担っており、絶対的存在感を誇る。 時には、手術中に提出された生組織を凍結標本化し、癌の浸潤などを判定、その結果を待って手術方針を決めるという大事な術中迅速診断をも担っている。 手術中でなくとも、治療中の疾病の状態を正しく把握、適正な治療手段により治癒に導くのが最大の存在価値といえよう。さらには、不幸にして死亡に至った状況にあっても、真価が十二分に発揮される。 死体解剖保存法により、治療効果、死因追求などを見極め、その多くの蓄積が医学の進歩に貢献している。実例として時津風部屋の時太山リンチ事件や女優・飯島愛さんのケースなどもその貴重な症例となっている。 時には画像診断でも発見不可能だった隠れていた所見を見いだすこともあり、組織病変まで追求する病理は極めて大切な業務である。 ただ、基本的にCTやMRIによる画像診断の進歩があり、死体解剖は、最近は世界的に減少傾向にある。 だが、日本には特異的な「剖検輯報」なる登録システムが存在しており、世界的にも類をみない立派な病理剖検記録として有名である。
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