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お笑いコンビ・ハリセンボンの一方が、肺結核で緊急入院した。同時に、看護師の発症も報じられ、かつて国民病として一時代を風靡した結核の密かな蔓延が、社会的に強くアピールされることとなった。 タレントにしろ、看護師にしろ、仕事仲間をはじめ周囲と多く接触する職業であるだけに感染の拡大が大変心配される。 今回のおふたりは20代30代とお若いが、実は高齢者の方がより深刻で、これから発症が増加する年代として特に注視されている。案の定、新聞(5/2)の片隅に、岩手の特養老人ホームで「集団結核3人死亡」の文字が躍る。 現在70、80才代の高齢者は、まさに結核大蔓延時代の生き残り、感染を濃厚に受けたリスクが高く、大きな弱みを持っている。 思春期をどうにか無事に通過できたにしろ、感染の危惧は絶大、事実、罹患率は急上昇している。 感染から60、70年経ち、何らかの原因で免疫機構が一時的に破綻、発病する。これを「内因性再燃」と呼ぶ。 これに対し、これが若い世代へ悪影響を及ぼしていることが十分考えられ「初感染発病」として2大別区分されている。 厄介なのは薬剤耐性菌の問題。既存の治療薬がほとんど効かない超多剤耐性菌の存在が決して少なくなく大変憂慮される。短期で治癒なんて甘い考えは全く通用しない。とにかく長引く咳はチョウ心配な赤信号として格別注視しなければいけない。 一旦結核治療となると、とにかく長期の入院・通院は覚悟すべき。そこで軽い副作用等があると、患者が勝手に薬の量を減らしたり飲まなくなったりして、治療中断の危険がしばしば発生してしまう。 こうした理由で「多剤併用長期化学療法」の基本は、スムーズに完遂させることが極めて難しい。そんなこんなで、日本は他の先進国に比べて、再発例における多剤耐性菌検出率がすこぶる高いという恥部を持つ。 とにかく治療の基盤は指示された治療方針を最後まで遵守しなければならない。そこで、諸外国で盛んに実施され成果の挙がっている方式「直視下服薬による短期化学療法」が大変参考となる。 こうした新たな結核包囲網を組み立て、官民あげて断固たる決戦をしかけなければ、かって死因第1位だったことのある恐怖の国民病気時代に逆行しかねない。
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