メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
医言放大
 
C型肝炎の感染力
 
   最近、C型肝炎に罹った、というはなしを親戚、そして趣味仲間からたて続けに聞き、感染の恐れも気になって、最新C型ウイルス情報を収集してみた。
 肝炎は肝硬変、更には肝癌に進展するケースが高く、特に気になるのは、国際的に突出して死亡率の高いこと。肝炎ウイルス感染はぜひとも避けたいところ。
 さいわい安心できたことは、C型については普通の生活では全く感染の心配がないこと。これまで通り、親密なるお付き合いを続けても何ら問題ない。
 つまり、C型肝炎ウイルスは血液を介してしかうつらず、単なる接触はもちろんのこと、同じ食器を使っても何の心配もいらない。
 知り合いの感染例では、全てインターフェロン(IFN)が使われ共にことなきを得た。確かに、日本肝臓学会の制定した「C型慢性肝炎に対する初回治療のガイドライン2009」では、IFNを中心とした72週間もの長期治療が代表例としてすすめられている。
 驚異的効果を発揮するIFNの登場で、ほとんどの肝炎は抑えられているが、それでも中には、無効或いは再燃するケースがチラホラ、万全というわけではない。
 ウイルスは血中では検出されず、肝臓に存在することがはっきりしている。非常に不思議に思われているのは、決定的ダメージを受けた肝臓を全摘し、他人の肝臓を移植した後でも、ほぼ100%C型肝炎になるという現実。からだのどこかにウイルスが残っていたという、恰も帯状疱疹ウイルスの如きしぶとさをもつ。
 再燃の心配がある一方で、我が国には感染していても気付かず、放置状態の患者が非常に多数いることが危惧されている。治療が長引く元となり、また副作用等で高額医療費につながっている。
 B型肝炎の方は、その8割方以上が母親から子どもへの垂直感染であるが、C型は基本的には、このような感染ではないし、感染力は極めて弱く、B型の何万分の1程度のレベルといわれている。
 C型の感染は、血液を介してのものである。つまり、医療行為が原因の医原性疾患であり、とりあえず、一般生活上での感染は心配ない。
 また、不幸にして感染したとしても、うれしいことに、IFNに引き続き新しい強力な薬剤が開発されており大変心強い。

(2011年2月11日掲載)
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(2011年2月25日掲載)
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