メディカル・エッセイスト 岸本由次郎  
 
医言放大
 
サッカードクターの苦悩
 
   サッカー熱が燃えにもえ上がっている。ファンのエキサイトぶりもすさまじいが、選手のファイトぶりも年々激化、反則の発生もハンパではない。
 例えば、イタリアのセリアAでは、今季後半のファウル数が、前半と比べて10%近くも増加したと発表、その対策に頭を痛めている。
 あまりにもラフなプレーの続出で、選手の間では傷害が絶え間なく発生する。お陰でチームドクターは大忙しだが、治療する選手への対応には格別の配慮が必要とされる。
 現場からは一日も早い復帰をせかされるから、とても一般的とはいえない、ほんの一時しのぎの特殊な治療法を選択せざるを得ないことがしばしばある。
 プロの選手寿命は短く、少々痛くともどんどん練習し、試合に出なければオマンマの食い上げになってしまう。
 ある監督が、選手の切実な悩みを代弁して。「一人の選手が身体のどこにも痛みがなく試合ができるのは、一年間でせいぜい2試合くらいだ」と。
 プロの世界では、単にうまいだけでは生き残ることはできない。まず、故障に打ち勝つ頑健な肉体をベースとして、さらには強固な精神力が備わっていなければスタートラインにつけないのだ。その上で、人並外れたテクニックが発揮され、ようやくファンの感動、かっさいを浴びることができるのである。
 国際サッカー評議会では、プレーのラフ化傾向に歯止めをかけるべく、最近ルール改正の動きがでてきた。
 ほかのスポーツルールを参考に「主審の2人制」或いは「ビデオレフェリー制」等が協議されているが、いろいろある中で大変興味深く特に注目されているのが「オレンジカード」の新規導入だ。
 現在は「イエローカード(警告)」と「レッドカード(退場)」の2種類があるが、「オレンジカード」は、その色からも推測されるように、まさに中間の反則規定。つまり、「一時的退場処分」。ラグビーでは10分間、ホッケーでは5分間以上等と規定されている。
 これで狙い通りフェアになるかどうかお楽しみだが、得点シーンが増えることで試合の面白みは増す。
 他のスポーツも時代と共にルール改正がされている。サッカーもこれで、一層楽しいゲームに生まれ変わってくれればと思う。

(2010年1月22日掲載)
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疼痛のない在宅医療
(2010年2月12日掲載)
◆サッカードクターの苦悩
(2010年1月22日掲載)
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(2010年1月15日掲載)