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さまざまな分野で、日本は世界をリードする大国であり、医療面でも自信をもって胸を張れる立場にあると思っていたら……。 ワクチンで予防できる疾病(VPD)への対応に関しては、なんと「先進国の中で最低」という厳しい評価が。 中でも、日本の風疹ワクチン接種の歴史は悲惨そのもの。取り組み初期が先天性風疹症候群(CRS)の発生防止を目的としていたため、生殖可能年齢の女性のみを優先する限定的ワクチン施策であったことがケチのつけはじめ。CRSとは、風疹感染妊婦から生まれた児の奇形症候群で、白内障、心疾患、難聴(3大症状)などさまざまなハンディキャップをもつ厳しい疾患である。 62~79年の期間は女子中学生のみで、その後男女を対象としたが、個別任意接種なため接種率は極めて低かった。必要とされる2回接種は90年からの開始である。結局、この猫の目ワクチン接種の中心的被害者となったのは20~40代の男性であり、今回大流行の約60%を占めることにつながった。 さらには、12年夏から未曾有の大流行(患者数1万4千人強)となり、感染妊婦からのCRS発症新生児が14年1月までに41人も発生する惨事となった。 こうした患者発生動向は、過去の予防接種施策と接種率に極めてよく連動している。合併症として脳炎、紫斑病が成人でも多数報告されており、決して侮ることはできない。 関連5学会は共同で厚労大臣に要望書を提出、行政の介入により予防可能な風疹流行の阻止を早急に実現できるよう進言した。 厚労省専門委員会は、無免疫成人男性らにワクチンを打つよう働きかけ、東京オリンピックの20年までに流行のない日本にしようと制圧方針を打ちだした。 アメリカでは、ワクチン接種を徹底したことで、2004年には疾病予防管理センター(CDC)は、アメリカ国内での風疹感染はほとんどなくなったと宣言している。 わが国のワクチン行政迷走の背景には、副作用(無菌性髄膜炎など)に対する過度な反応が社会問題へと拡大したことがあり、94年の予防接種法改正で、個別接種となったことによる。 その後、06年からは定期接種となったが、これまでのホコロビにはまだまだ精力的大修繕が必要とされる。
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